
私が経営するグロース・キャピタルは、非連続な成長を目指す「上場ベンチャー」の資金調達や成長の支援をしている。前回の記事においてデータで示したとおり、高い成長を続け上場まで辿り着いたものの、上場後に成長が止まってしまう会社は少なくない。
ベンチャーも手を打っていないわけではない。国内で成功した事業やサービスを海外にも広めて業容の拡大を狙う。しかしそれがなかなかうまくいかないのである。
今回は、海外進出を成功させたメルカリをケーススタディーとして、そのヒントを探っていく。
メルカリの海外挑戦はとにかく早かった
メルカリの創業は2013年。インターネットで中古品を売買するサービスでは「Yahoo!オークション」などが先行していたが、メルカリはフリマアプリとしてスマホに特化し、商品を匿名で発送できるサービスを導入するなどして、利用者を右肩上がりに増やしてきた。
日本だけでなく、海外でもサービスを展開するメルカリ。とりわけ米国では新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要の波を捉えて利用が増えている。
同社は設立から1年もたたない2014年に米国で「メルカリUS」を設立。日本とほぼ同時期に立ち上げ、同時に急成長を狙った。この決断には、チャレンジングな印象を持つ人もいれば、経営リソース、マンパワーが分散することからクレイジーだと評価する人もいた。私が当時抱いた印象も「セオリーとは異なる」だった。
では、その成果はどうだったのか。米国で多くの利用者を獲得し、海外進出は大成功といえる。だが、その山は高く険しいものだった。多くのメディアが書いている話と重複するが、進出当初は苦戦を強いられた。15年には欧州でのサービス拡大を目指して英国に「メルカリヨーロッパ」を設立したが、3年後の18年に撤退を余儀なくされている。
成長投資により上場後も長く赤字が続いたメルカリ。事業は国内メルカリと米国メルカリ、そしてキャッシュレスサービスのメルペイの3本柱だった。メルペイはキャッシュレスサービス黎明(れいめい)期にあって、各社との覇権争いのためのマーケティングコストが拡大し、米国事業も市場での浸透に投資がかさんだ。3本柱のうち2本が赤字で、好調な国内メルカリ事業が稼いだ利益を消してマイナスになってしまう状況だった。こうした背景から、投資家を中心に「米国から撤退すべきだ」との声が上がった。
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