相次ぐ手元資金の取り崩しによって、1998年度末に1015億円あった現預金残高は、2000年度末に376億円にまで減少した。これは、支払い能力の大幅低下を意味する。こうした危機的状況を脱するため、キャッシュフローの改善を目指して、2001年4月から事業構造と財務構造の改革に乗り出した。

 そもそもフリーキャッシュフローのマイナスが続いたのは、家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」の販売不振が大きかったからだ。「1台売るごとに2万円の損が出た」と最高財務責任者(CFO)の中村俊一・専務執行役員が振り返るように、この事業は売れば売るほど赤字が膨らむ構造だった。

 そこで、2001年1月にドリームキャスト事業からの撤退を表明し、同年4月からは計画通り新規の生産を中止した。赤字部門の出血を止めたことで、2001年度には営業活動で93億円を獲得することができた。その一方で、新規投資を半年間凍結するなど投資活動の支出を85億円に抑えたため、同年度にはフリーキャッシュフローで9億円を確保することができた。

 さらに、財務の健全化を進めるため、転換社債の発行を通じて486億円のキャッシュを獲得、借入金の返済や社債の償還に充て、残りで手元資金を積み増した。これによって、2001年度に現預金から有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」はマイナス366億円となり、前の年度のマイナス825億円から改善した。

 中村専務は「2002年度にはネットキャッシュで70億円を確保し、実質無借金経営にする」と言う。もっとも、三菱証券のアナリスト、村上宏俊氏は「転換社債の株式への転換が進むかどうかが今後の課題」と指摘している。

含み益には頼れない

 フリーキャッシュフローのマイナスが続く限り、いずれ外部からの金融支援が必要になる。1996年10月に6400億円の債務免除を受けた飛島建設を見てみよう。2000年度と2001年度にフリーキャッシュフローがそれぞれ9億円、186億円のマイナスだった。そのため、今年7月には114億円の債務の株式化による2度目の金融支援も受けた。

 負債削減など財務改革の原資は結局は営業活動で得るキャッシュである。これからは株式や土地の含み益などに頼る経営は通用しない。キャッシュの創出力が失われれば、企業の存続も危うくなる時代になっている。

(文=谷川 博)

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