新型コロナウイルス禍によってゴルフ業界は他の業種と同じく、大きな打撃を受けた。2020年4月に出された緊急事態宣言では、多くのゴルフコースが一時営業停止に追い込まれた。だがその後、ゴルフ場の利用者は増えている。世界でも同様の傾向だ。屋外でソーシャルディスタンスを保ちながらプレーできる点が再評価されたことをきっかけに、一種の潮目を迎えているとも言える。

 経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると19年には、ゴルフ場の利用者は約930万人だったが、20年には緊急事態宣言などにより約891万人に減少している。しかし、21年は約1026万人と大幅に増加。同統計によると、ゴルフ場利用者は03年の約998万人を20年弱ぶりに上回った形だ。

プレーをやめた人が戻ってきただけでなく、新規で始める人も増えつつあるという(写真:PIXTA)
プレーをやめた人が戻ってきただけでなく、新規で始める人も増えつつあるという(写真:PIXTA)

 そうした事情もあり、じわじわとゴルフ会員権の相場も高まりを見せている。中には、1年で価格が数倍になった会員権もある。ただ、昔のような会員権の奪い合いになるほどの熱狂は生まれていない。その理由の一つは、バブル崩壊後に起きた会員権の暴落を経験した人が少なくないことも挙げられるだろう。

 ゴルフ会員権には独特のリスクもある。会員権の証書には預託金と呼ばれるゴルフ場開発用に預けた金額が記載されている。この預託金は、本来なら一定の据え置き期間を経た後、返還される。しかし、バブル崩壊後、経営状況が厳しくなって返還できなくなったゴルフ場もあり、一部は訴訟にまで発展している。そうした背景もあり、ゴルフ会員権はかつてに比べ、投資価値や資産価値が下がっている。また、会員権の名義書き換え時に発生する費用なども流動性の阻害につながっている。

 ビジター会員でもプレーできるコースが増えた今、ゴルフ会員権を持ち続ける価値やメリットがどこまであるのか。ゴルフ人気が高まってきたとはいえ、これからもゴルフ会員権がかつてのような価値を持ち続けるとは限らないだろう。

 ちょうど20年前、ゴルフ会員権を巡り、今回よりも大きな変化が起きた。業者同士の取引実態が表に出にくく、個人からすれば、不透明だったゴルフ会員権の売買が、「ネット会員権取引市場」の創設によって変わろうとしていたのだ。そのとき何が起きようとしていたのか、当時の記事を紹介したい。

 以下の記事は日経ビジネス2002年1月21日号の時流超流『あなたの会員権に値はつくか』を再掲載したものです。登場する人物の肩書、企業・組織名、資本・提携関係、表現などは原則として掲載時のものです

あなたの会員権に値はつくか

 ソフトバンク・ファイナンスグループのゴルフ場予約・評価サイト最大手、イー・ゴルフ(東京・千代田区、山内信二社長)は1月23日、ゴルフ場の会員権の取引をインターネットで仲介する「ネット会員権取引市場」の創設を発表する。

 従来、ゴルフ会員権の取引は全国で800あると言われるゴルフ会員権業者が仲介していた。売り手、買い手を持つ会員権業者同士の相対取引も盛んに行われているが、この売買情報は取引業者の業界組合が運営するクローズされたシステムでやり取りされるだけだった。一般にウェブサイトなどで公開されている「会員権相場」などの表は、個々の取引業者が独自に掲示しているものがほとんどだ。“本当の取引価格”である業者間相場が、会員権の売買を希望する個人や法人に直接伝わることは、これまでなかった。

 これに対し、ソフトバンク・ファイナンスグループは「ゴルフ会員権は、日本人の資産ポートフォリオの中で土地などとともに大きな比率を占めるのに、その価格決定プロセスが明らかでないのはおかしい」(山内社長)と、2年前からゴルフ会員権の公開市場開設の機会をうかがってきた。

次ページ ほとんどのコースは無価値?