家電量販店の掃除機コーナーは、ここ20年で様変わりした。サイクロン式掃除機や、スティック型、ハンディ型など、利用シーンに合わせた製品が登場し、選択肢が大きく広がった。中でもロボット掃除機の台頭は顕著だ。
2002年に米アイロボットはロボット掃除機「ルンバ」を発売、ベストセラー機として人気を集めた「ルンバ 500シリーズ」は07年に発売されている。掃除という面倒な作業を機械に任せられるため、ロボット掃除機は日本でも広く受け入れられた。ルンバに対抗する国産の製品としては、東芝ホームアプライアンス(現・東芝ライフスタイル)が11年にSmarbo(スマーボ)を発売。シャープはCOCOROBO(ココロボ)を12年に、パナソニックは15年にRULO(ルーロ)を発売している。
一見すると、国産メーカーの中でもパナソニックは後発メーカーに見える。だが、発売に至らなかったものの、02年には一般家庭でロボット掃除機の実証実験をする状況にあったことはあまり知られていない。世界初の家庭用ロボット掃除機「トリロバイト」をスウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックス社から供給を受け、東芝が日本で発売したばかりの頃だ。

今回紹介する20年前の記事を読むと、障害物を避けるためのセンサーの使い方で試行錯誤していたことが分かる。その中にはストーブなど火気を避ける熱センサーの採用もあった。トリロバイトやオリジナルのルンバが発売されたばかりの頃、日本メーカーがロボット掃除機でどのようなチャレンジをしていたのか。当時の記事を取り上げ、振り返る。
以下の記事は日経ビジネス2002年12月2日号の「技術&イノベーション 掃除ロボット ボタン1つで勝手に掃除」を再掲載したものです。登場する人物の肩書、企業・組織名、資本・提携関係、表現などは原則として掲載時のものです
誰もいない部屋の中をロボットが動き回り、ゴミを吸い込んでいく。掃除を終えると、ロボットは自身に充電をするための台にゆっくりと戻っていく――。少し前ならSF映画の中でしか目にできなかったこんな光景が今、現実のものになりつつある。掃除ロボットの“誕生”である。
日本で先行して掃除ロボットを発売したのは、スウェーデンの大手家電メーカー、エレクトロラックス。東芝が商品供給を受けて10月から販売を開始した。
自走式クリーナー「トリロバイト」と名づけられたこの掃除ロボットは直径35cm、高さ13cmの円盤形。ボタンを押すだけで部屋の床の掃除をするというものだ。トリロバイトとは古代の海底生物、三葉虫のこと。ゴミを吸い込みながら部屋の中を生き物のように動く様は、まさに三葉虫が這っているようでもある。
連続して運転できる時間は約1時間。6畳の部屋なら約30分間、最大で40m2まで掃除可能だという。ただ、現在の価格は、家電量販店などの店頭で28万円程度と一般の掃除機の5倍から10倍にもなっている。
この一方で、松下電器産業も1985年頃から掃除ロボットの開発を続けている。松下の場合は自社開発にこだわり、93年には業務用で4台の掃除ロボットを羽田空港に納めている。この時のロボットは、単純な往復走行ができるだけのものだったが、技術開発は着実に進み、2年前からいよいよ家庭用の掃除ロボットの開発を本格的に始めた。そして、今年3月にはついに試作機を発表。現在、一般家庭での実証実験を行う段階に入っている。
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