新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国内旅行や海外旅行をする人の数は大きく落ち込んだ。その影響を受けた業界として、いの一番に上げられるのは旅行業界だろう。各国で入国規制や行動規制が実施されたため、海外旅行を毎年していた人も、ここ2年間はほとんど海外に行けなかったはずだ。

 旅行業界最大手のJTBでは、2021年3月期の連結決算で最終損益が1051億円と過去最大の赤字となった(前の期は16億円の黒字)。これを受けて21年5月、前年からのスリム化と合わせて、社員全体の約25%に当たる7200人と国内115店の削減を発表。給与カットも進めた。さらに、本社ビルを売却するなど大胆な施策を追加したこともあって、22年3月期決算での黒字化を見込み、23年度の新卒採用も予定している。とはいえ先行きはいまだ不透明だ。Go To トラベル事業の再開などで、反転攻勢の可能性もあるが予断を許さない。

 そんなJTBにまつわる日経ビジネスの04年の記事を紹介したい。約20年前、同社は40歳以上の3200人を対象に700人をグループ会社へ転籍させることを決断(結果として900人が応募)。これにより本社の人員をスリム化することになった。背景には、米同時テロやSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響で悪化した業績があった。

 それまでJTBは55歳以上の社員を半強制的にグループ会社へ転籍させていたが(01年に運用停止)、04年の際は社員が転籍先のグループ会社を選べる形で転籍できる制度を導入・実施した。当時、同社は人件費削減は結果であって、目的は中高年層の活性化と説明している。

 だが、残された課題もあった。バブル時代末期の1991年~93年に大量採用し、年齢ピラミッドのこぶとなっていた30歳前半世代の処遇だ。当時、この世代だけで社員の20%に当たる約2000人がおり、40歳以上の約3200人と並んで大きなかたまりとなっていた。

 今回の人員削減は、2004年の転籍募集の際、JTB本体に残った1991~93年入社組も対象となったはずだ。人員削減は予定を上回って進んでいるようだが、今後、どこまで若返りをはかり、そして業績をコロナ禍以前に戻せるのかが注目される。

 JTBは2014年からふるさと納税サイト「ふるぽ」などを運営、20年には旅行をキーワードに、個人・法人・社会・国が抱える課題の解決に寄与するソリューション事業を「第3の創業」として推進している。また、21年には仮想空間で観光やショッピング、コンテンツを楽しむ「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」構想を発表した。これら従来の枠組みとは異なる事業展開を含め、JTBが巻き返しを実現できるか。20年に就任した山北栄二郎社長の双肩にかかっている。

※以下の記事は日経ビジネス2004年3月22日号に掲載された「JTB、転籍は40歳から 海外旅行低迷で人員の2つのこぶにメス」を再掲載するものです。登場する人物の肩書、企業・組織名、資本・提携関係などは原則として取材当時のものとなります。

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