動画で紹介した商品が次々ヒットし、注目される“TikTok売れ”現象。日経トレンディが選ぶ「2021年ヒット商品ベスト30」のトップにも輝いた。本シリーズは、TikTokを活用して消費や流通の新たな形に挑む企業や個人にフォーカスした著書『TikTokショート動画革命』(日経BP)の一部を抜粋、再編集してお届けする。

 シリーズ4回目は、ユーザーが商品やサービスを紹介する「レビュー動画」の骨格を築いたクリエーターの1人である「しんのすけ氏」を取り上げる。

京都府出身。助監督として映画・ドラマ業界に入り、現在は映像作家、専門学校講師を務める。2019年にアカウント開設。フォロワー数は映画レビュー系ではトップクラスの約60万人
京都府出身。助監督として映画・ドラマ業界に入り、現在は映像作家、専門学校講師を務める。2019年にアカウント開設。フォロワー数は映画レビュー系ではトップクラスの約60万人
[画像のクリックで拡大表示]

 TikTok売れの大きな要因となっているレビュー動画。TikTokで様々なレビュー動画を見ていると、ジャンルは違っても動画の構成などが似ているものが多いことに気づく。冒頭はインパクトのあるキャッチコピーから始まり、商品やサービスの説明が続き、最後に感想を述べるという具合だ。このスタイルを作り上げたのは、「しんのすけ映画感想」のアカウント名で活動する齊藤進之介氏だ。

 しんのすけ氏がTikTokのアカウントを開設したのは2019年の夏。当時のTikTokは、ダンスやリップシンクなど若年層による投稿動画が多い時期だった。そんななか、19年8月末に投稿したある映画のレビュー動画が大きな反響を呼び、「映画感想クリエイター」として人気を獲得。21年11月現在、約58万人ものフォロワーを擁する。

 TikTokへの投稿を始めたきっかけは、「学校の授業」だったという。「僕は専門学校の映像系のクラスで講師を務めているんですが、夏休みに『自分で何か課題を作って挑戦する』という宿題を生徒に出したんですね。『自分もやらないとフェアじゃないな』と思い、僕も夏休みの間に『TikTokで1回でもバズらせる』ことを課題に決めたんです(笑)」(しんのすけ氏、以下同)。かつて映画の撮影現場で助監督を務め、現在も映像制作に携わるしんのすけ氏。当初はレビューではなく、試行錯誤で映像を作ったが「全然バズらなかった(笑)」と振り返る。

 映画の感想を動画にすることを思い付いたのは、『ONE PIECE STAMPEDE』(19年公開)を見たことがきっかけだった。「僕は昔から『ONE PIECE』が好きなのですが、『ONE PIECE STAMPEDE』は面白くなかったんですよ(笑)。いつものようにツイッターに感想を書くかと思ったときに、TikTokで映画の感想を話している人がいないなと初めて気が付いて」

 ものは試しでと、『ONE PIECE STAMPEDE』が面白くないと感じた理由を説明する動画を投稿すると、再生回数が1~2日で数十万回を超える状態に。さらに、しんのすけ氏が驚いたのが、1900以上ものコメントが付いたことだった。コメントの内容はまさに賛否両論。「なんでエラそうにしゃべってるんだ」というコメントが付く一方で、「反論されるのが怖いから、ツイッターなどで面白くないと言えなかった」という、同意のコメントもあった。

 「映画の感想さえSNSで言えないって、つらい世の中だなと。また『面白くないという意見をなぜわざわざ言うのか』というコメントもあったのですが、そんな反応があるということはやったほうがいいんだなと思いましたね。そこで、面白い/面白くないという意見を、僕は感じたままに言っていこうと決めました」

次ページ 誰もが参考にするレビュー動画のスタイルが誕生