旅行予約サイトでの評点が大幅アップ

 TikTokの導入がもたらしたポジティブな変化はこれだけにとどまらない。1つは、求人だ。TikTokを見て明るく風通しの良い雰囲気を感じ、「こんな旅館で働きたい」と高校生の応募者が増え、例年苦労する求人が21年は順調に進んだそうだ。そして、宿泊客を迎えるスタッフの接客への姿勢も変わり始めた。約40人いるスタッフのほとんどが動画に出演したこともあり、〝常に見られている〟ということをより強く意識するようになったのだという。

 「接客業なのでもともと見られるという意識はありましたが、より強くなりましたね。館内でもお客様から、『実はTikTokの動画で見て来ました』と言われることも多くて。お客様は、事前にTikTokで私たちのことを知った上で当館にいらっしゃっているのだなと常に意識をするようになりました。と同時に、お客様と打ち解けられるのが以前より早くなったのも大きな変化です。フロントは、基本的に『初めまして』なのですが、私たちを知っている前提でお越しになるお客様が多いので、いい意味で距離感を縮めやすくなりました」(是松氏)

 宿泊客との近い距離感は、売り上げ向上に直結するさらに大きな効果を生み出した。それが、〝旅行予約サイトでの評点アップ〟だ。「楽天トラベル」「じゃらん」などの旅行予約サイトは、接客、設備、食事などを利用者が星やポイントで評価する仕組みとなっている。この評点が少しでも高くなるよう、各宿泊施設ではいろいろな手を尽くしているが、鳥羽ビューホテル花真珠ではTikTokを始めた21年3月以降、大幅にアップ。「じゃらん」で三重県1位、全国でもトップ100位内に入ることができた。

付き合いのある漁業関係者や観光施設とコラボし動画を制作。地元の盛り上げに一役買っている
付き合いのある漁業関係者や観光施設とコラボし動画を制作。地元の盛り上げに一役買っている

 「予約サイトではポイント獲得で掲載順位が上がるので、評点は売り上げに直結するんです。例えば、1位と2位では1000万円くらい差が出ることもあるほど。これまでは、ポイントを上げるために料理の一品サービスなどをしていましたが、接客の評価を上げるのは特に難しいと感じていました。でも、TikTokを始めてから、『じゃらん』で4.1だった評点が4.5にアップ。コロナ禍でも、例年通りの売り上げを確保できています。また、旅の形態が観光中心から施設を楽しむ方向へ様変わりしたことも、TikTokで宿を紹介したこととマッチしたと感じます。私たちが目指していた『スタッフに会いに来ていただける旅館』が実現できつつあるのかなと思いますね」(迫間氏)

 今後はTikTokを利用して地域全体のフックアップにも力を注ぎたい考えだ。すでに、鳥羽水族館や鳥羽の海女さんなどとのコラボレーション動画も制作しており、地元の優良企業やTikTokクリエイターとも積極的に関わりたいとの意欲ものぞかせる。鳥羽ビューホテル花真珠の、TikTokでの挑戦はまだまだ続きそうだ。

TikTok ショート動画革命

 BGMとして使われた楽曲が相次いでヒットしたのを振り出しに、小説やコスメ、食品・飲料、高級車や高級旅館まで、動画で紹介された商品が次々と人気になり、“TikTok売れ”なる言葉も定着。TikTokは「消費を動かすプラットフォーム」として、最注目のツールとなった。

 その高い拡散力の源はどこにあるのか? 実際にTikTok発で売れた商品についてはどんな施策が行われたのか? ヒットを誘うクリエイターたちの動画作りの秘訣は?など、TikTok Japan初の全面協力の下、豊富なケーススタディーと関係者インタビューを通じて、“TikTok売れ”の極意を明らかにする。

この記事はシリーズ「TikTok ショート動画革命」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。