遠く離れた実家で、父が孤独死していた――。東京でフリーランスエディターをしている如月サラさんはある日、予想もしなかった知らせを受けます。如月さんは50代独身、ひとりっ子。葬儀、実家の片付け、相続に母の遠距離介護など、ショックに立ち尽くす間もなく突如直面することになった現実をひとりで切り抜けていく日々をリアルにつづった書籍『父がひとりで死んでいた』(日経BP)より、一部抜粋して紹介します。

 冬、遠く離れた故郷で父がひとりで死んでいたのが見つかった。その前年の夏、熱中症で倒れて救急車で運ばれた母は認知症と診断され、専門病院に入院していた。父はそのわずか5カ月後にいなくなってしまったのだ。

 母には父の死を伏せていたけれど、9カ月にわたる入院を経て病院から高齢者施設に移る日、遠回りして実家に連れていき、既に半年前に父が亡くなったことを伝えた。

 病状が進み、ほとんど何も話さなくなっていた母は父の遺影を見て「ごめんねえ、お父さん」と口にした。施設に入居したら、母はおそらくもうここに帰ってくることはできないだろう。いよいよ実家は無人になった。私は本当に、この100坪の土地と一軒家をひとりで守っていかなくてはならなくなったのだ。

水道光熱費はどの口座から引き落とされているのか

 ふと我に返ると、私はこの家のことを何も知らないと気がついた。滞在している間だって電気代も水道代もかかっている。固定電話もつながっている。そのお金がどこから引き落とされているのかを確認しなくてはならない。

 「重要なものは僕の部屋の金庫にまとめて入れてあるから」」と以前父が言っていた気がするので、見てみることにした。そっと父の部屋に入る。「お父さん、金庫の中、見るからね」と宙に向かって声をかけた。開けられるだろうかと心配だったけれど、金庫に鍵はかかっていなかった。

 入っていた何冊かの預金通帳をめくってみる。父の名義の通帳も母の名義の通帳もあった。マメな性格だった父は、どの通帳が何の用途であるか、それぞれのキャッシュカードの暗証番号が何であるかがわかるようきっちりと整理をしていた。

 めくってみると、どの通帳もここ数カ月は記帳した記録がなかったので、近所の銀行の支店に行って状況を確認した。その中に公共料金等の引き落とし専用の口座があったが、内容を見て驚いた。残高がマイナスになっていたのだ。ごく少額の定期預金がセットされ、そこから借り入れがなされていた。

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