ビジネスの創造や社会の変革に挑戦する高い志を持ったリーダーを世に多く輩出するグロービス経営大学院(MBA)。その現役・実務家教員たちが、ビジネスパーソンに必須のビジネスフレームワークやマインドセットのコンテンツを月2回の予定でお届けします。第2回のテーマはPEST分析です。

 今回は、ビジネスを取り巻くマクロ環境を分析する「PEST分析」を解説します。PEST分析はさまざまな戦略を検討する際の下準備として、必ずと言っていいほど使われます。

 現在の状況はもちろん、将来の予測にも使える汎用的な分析手法です。これを使いこなせれば、暗中模索な現代で抜きんでた技術を身につけられます。知らない人はしっかり学び、知っている人は知識をアップデートしましょう。

PEST分析とは

 PESTは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の英語の頭文字を取ったものです。通常は自社ではどうにもできない、所与の条件とみなせる世の中のマクロ環境の分析に使います。PESTの4つの視点について、図1に示した内容を中心に分析します。

図1 Pは法律(規制・税制)、政府・関連団体の動向、消費者保護、公正競争など。Eは景気、価格変動、貯蓄率、為替、金利など。Sは人口動態、宗教、価値観、倫理観、社会規範、世論、ライフスタイルなど。Tは技術革新、特許、生産・商品化技術、代替技術などを意味する
図1 Pは法律(規制・税制)、政府・関連団体の動向、消費者保護、公正競争など。Eは景気、価格変動、貯蓄率、為替、金利など。Sは人口動態、宗教、価値観、倫理観、社会規範、世論、ライフスタイルなど。Tは技術革新、特許、生産・商品化技術、代替技術などを意味する

 なお、昨今は地球環境への配慮から、エコロジー(Ecology)のEを加えて「PESTE分析」を推奨する人もいますが、今回はオーソドックスなPEST分析を紹介します。

 PEST分析は、ぼんやりとさまざまな事象を網羅すればいいのではなく、自社のビジネスに特に関連すると思われる箇所を詳細に深掘りすることが基本です。

 マクロ環境はあまりに多岐にわたるため、すべてを網羅しようとしても不可能であり、ある程度自社のビジネスに関わる内容に絞って分析したほうが効果的なことが多いからです。例えばゼネコンなら、社会(S)や技術(T)以上に、政治(P)や経済(E)の動向をより慎重に見極めるほうがいいでしょう。

 製薬会社であれば、比較的経済(E)の影響は受けにくいとされる一方、政治(P)の中でも特に薬事行政の影響を大きく受けるため要注意です。

 創薬の手法も、ゲノム編集技術や人工知能(AI)活用など、どんどん進化していますから、技術(T)の進化はしっかり見極める必要があります。社会(S)については、高齢化は追い風と言えそうです。健康志向はさらに高まる見込みですが、人々がいきなり健康になることはまずありませんから、マイナスの影響は少ないと言えそうです。

 なお、2020年に生じた新型コロナウイルス禍のようなパンデミックが起こる可能性は高まっているので、そうした可能性も常に意識しておくべきでしょう。

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