クロスSWOT分析で仮説を検証する
SWOT分析は、先述したように、それを一覧するだけでも重要な課題やとるべきアクションが見えてくることも多いですが、応用編や他の分析と絡めた発展編もあります。
それが、クロスSWOT分析です。これは、SWOT分析の各セル内に書き出した要素のうち、重要なものを上部と左側にしるし、それらを組み合わせてどのような仮説が成り立つかを考える手法です。図3中、「そこから何が言えそうか?」「どんな仮説が成り立つか?」が見えてきます。クロスSWOTは、分析手法というよりは仮説を出す方法論と捉えることもできます。
例えば「強み×機会」がつながったセルであれば、県内の他の地銀が弱い、あるいは他県の地銀と良好な関係にあるといったことから、「地元地銀や他県地銀とアライアンスを組んだり、M&Aをしたりすることで規模を拡大し、経営の効率化が図れるかもしれない」といった仮説が導けます。この動きは近年、実際に進んでおり、十分検討に値するでしょう。
ほくほくフィナンシャルグループのように北陸銀行(富山市)と北海道銀行が「飛び地統合」した例もあります。そうした事例なども参考にすると、さらに発展した仮説が見いだせるかもしれません。
「強み×脅威」のセルについては、例えば「県の魅力度が上がれば、ナンバーワンの地位を生かせる。県ともっと連携して魅力度アップを図るべきだ」といった仮説が考えられます。
確かに地方は人口減少で苦しんでいますが、業務のオンライン化が進んだこともあり、地方でベンチャー企業を立ち上げようという流れも、一方では起きています。具体的な内容はもう少し詰める必要がありますが、ユニークなアイデアが思い浮かぶようならこれも面白い施策に結びつくかもしれません。
「弱み×機会」のセルについては、「県内の主要顧客を確実に取り込む」などの仮説が生まれるかもしれません。いきなりメインバンクになれないまでも、少しずつ取引を増やすというやり方は検討してもいいでしょう。
「弱み×脅威」のセルについては、「早急なDXによってコスト削減を図るとともに、顧客の利便性を上げるべきだ」などの仮説が導けそうです。
どれを優先的に検討すべきかは一概には言えませんが、一般には「強み×機会」のようにポジティブな要素を生かす仮説、そして「弱み×脅威」のようにネガティブな懸念を確実に潰す仮説を優先度高く、深く検討することが多いようです。
SWOT分析やクロスSWOTは、自動的に解を導いてくれるようなものではありません。できるのは、あくまでも現状の把握とそこから仮説を導くことです。事実を網羅して満足するのではなく、そこから何が言えるのかをしっかり考えることが非常に大切です。これは分析全般に当てはまることですが、往々にして事実の網羅(セルを埋めただけ)で満足しがちなSWOT分析では、特に心がけたいものです。
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