ポジショニングの捉え方
ターゲットとする市場を選んだら、ポジショニング(P)を検討します。ポジショニングとは、「想定顧客の頭の中に、自社にとって有利な差別化ポイントを植え付けること」とも表現されます。前回「目を閉じても『ペルソナ』がイメージできるまで落とし込めているか」で紹介した通り、ペルソナはポジショニングに関連する要素なので、ぜひ併せてチェックしてください。
ペルソナに「自社製品やサービスはこの部分で他社に勝っています」あるいは「ここが、ほかにはない独自性です」ということを認知してもらうわけです。ポジショニングとは、自社ならではの提供価値をしっかり検討することとも言えます。
ポジショニングでは、顧客にとって分かりやすい差別化ポイントを2軸に取り、自社を好ましいポジションに位置付けられるようにマップを策定します。通常、右方向と上方向がプラスとされますから、ポジショニングマップでは自社を極力右上のほうに位置付けられるよう工夫します。
上の図はバーガーショップ業界において、「マクドナルド」を主役として描いたポジショニングマップの例です。マクドナルドには優れた点が多々あるので、その中でどれを前面に打ち出すかは悩みどころです。
かつて安さや速さといった軸を打ち出していた時代もありましたが、最近は平均客単価を上げるような施策を打っています。このため「安さ」を前面に出し過ぎると、具体的な施策と不整合を起こす可能性もあります。
そこでこの例では、マクドナルドの圧倒的利便性(店舗が多い、駅に近いなど)、そして万人向けである(老若男女を問わない、勉強や仕事など飲食以外での長居もOK)という軸を前面に出してみました。
これは他のバーガーショップにはない大きな差別化要因として受け入れられやすいでしょう。さらに外食チェーンとして競合する「吉野家」をはじめとする牛丼チェーンとも差別化ができています。牛丼店には勉強や仕事のために長居する雰囲気はほぼないからです。
もしマクドナルドのライバルである「モスバーガー」がポジショニングマップを作成するのであれば、「健康的」「食材にこだわる」といった軸を打ち出すと、マップ上において自社を右上に位置付けやすくなるでしょう。
さて、一般的に「速い」「安い」「品質がいい」「安心できる」などは顧客にとってうれしいことであり、ポジショニングマップでも多用されます。ただ、ややありきたりという側面は否めません。
そこでしばしば用いられる手法が、従来業界に存在しなかった独自性の高い軸を打ち出し、オンリーワンのポジションを取るという手法です。
例えば、「RIZAP(ライザップ)」はスポーツジムビジネスにおいて、「結果にコミットする」という新たな軸を打ち出すことで、「安さ」や「利便性」という軸で競っていた他のジムとの差別化を図り、成功しました。あえて価格を高く設定したことも、本当にやる気のある人だけを呼び寄せるという効果をもたらしました。
今や動画配信サービスの雄となった「Netflix(ネットフリックス)」はかつてDVDレンタルをコア(中核)ビジネスとしていて、当時はビデオレンタル大手の「ブロックバスター」がライバルでした。
そのネットフリックスが2000年前後に打ち出したユニークな差別化の軸が「定額で借り放題」です。今でこそ定額料金のサブスクリプションサービスは当たり前になりましたが、当時としては非常に画期的な戦略でした。
レンタルビデオやレンタルDVD業者が延滞料金を収益の柱としていた時代に、「延滞料金なし」にしたことも斬新でした。最初は「それでもうかるのか?」という懐疑的な見方が多かったものの、レンタルDVDのヘビーユーザーを引き付け、ネットフリックスが業界でのプレゼンス(存在感)を高めるきっかけとなりました。
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