提供価値で捉え直す

 パソコン市場では各社が激しい競争を展開していて、個人向けでは米アップル社がそのブランド力を強みに人気を博しています。一方、法人向け市場では、特に大企業に対してはサーバーなどの機器と連動して販売されるため、NECや富士通、東芝などが力を発揮しています。

 こうした中、パナソニックが販売しているノート型パソコン「レッツノート」は、「日経コンピュータ」による顧客満足度調査で何度も1位を受賞しています。レッツノートが顧客に提供している価値をプロダクトの構成要素からひもといてみましょう。

 先述の通り、個人向けや法人向け市場には強力なライバルがひしめいています。そこでサーバーなどの機器を取り扱っていなかったパナソニックが着目したのが、パソコンを外に持ち出して使う機会の多い中堅企業の営業担当者や新聞社、出版社の記者でした。

 そのこだわりは「仕事を止めないこと」。レッツノートは、電子部品の実装から組み立て・検査まで日本国内で手がける一貫生産体制にこだわっています。レッツノートを生産する神戸工場では、出荷前に「人が使う以上は感覚的な違和感も不具合」と考えて、キーボード一台一台すべてを人の手でたたいて検品しているといいます。

 加えて、プロダクトの中核である情報処理、記録媒体というベネフィットだけではなく、形態や付随機能においても顧客への価値提供を追求しています。

 外回りの多いユーザーが気軽に持ち歩けるよう、形態では頑丈さを重視。オフィスの机の上から落としたり、満員電車の中で押し潰されたりしても、問題なく作動することを基準としています。ただ、むやみに頑丈さを追求することはしません。なぜなら重さが増して、気軽に持ち歩きたいというユーザーのニーズを満たせなくなるからです。

 万が一、故障した場合でも、付随機能である保証やアフターサービス体制は万全です。修理対応は迅速で、ユーザー自身だけではなく、社内で情報機器を管理するシステム部門にとってもありがたい存在と言えます。

 こうした製品開発やサービス体制を実現するために、パナソニックでは「レッツノート タッチ&トライ」というイベントを開催しています。これには営業部門だけでなく、開発や製造、サービス、人事、経理のスタッフも説明要員として参加します。単なるプロモーションなのではなく、直接ユーザーの声を聞き、製品開発やサービスの向上に反映させることを狙っているからです。

 顧客への価値提供を、改めてプロダクトの構成要素というモデルから捉え直してみると、その有用性に気づかされます。プロダクトの中核となる基本的な機能の改善ばかりを追い求めるのではなく、形態や付随機能にもしっかりと目を向けて顧客のニーズに応えていく、こうしたベクトル合わせが組織全体で必要でしょう。

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