実際のビジネスシーンではこう使う

 もう1つ、ある金融機関について7Sで分析した例です。こちらは課題が多く、早めの対策が必要と言えるでしょう。

Strategy:全国に多数ある支店数と知名度を武器に営業を行う。資産運用は保守的で、確実なリターンを目指す。

Structure:大企業のピラミッド型の組織。支店と本社部門から成るが、両者の意思疎通はあまりできていない。本社が支店に対して優位な立場に立っている。

Systems:年功序列型の人事制度。駆け足で昇給・昇格することはまずない。各プロフィットセンターに対する利益追求のプレッシャーは強くない。会議体が多く、意思決定に時間がかかる。ガバナンス(企業統治)の仕組みが弱く、経営陣が適切とは言えない意思決定をしたり指示を出したりするリスクがある。

Shared Value:「顧客のため」を表向きには掲げているが、従業員に徹底されているとは言い難い。現場では社会貢献の意識は希薄。

Style:大企業ゆえの官僚的な文化が強い。前例踏襲主義でスピード感は速くない。全体的に大きな変化を好まない。支店は上司次第で風土が変わる傾向が強い。金融機関ゆえ、コンプライアンス(法令順守)に対する意識は全般的に高い。

Staff:金融大手であるため、それなりにポテンシャル(潜在能力)のある人材は採用できているが、それを生かしきれていない。年功序列意識が強いため、必ずしも従業員の向上心は高くない。シニア社員の中には俗にいう「窓際族」も多く、組織に貢献できていない。一方で一部に優秀な社員もおり、二極化している。

Skills:高度な販売手法などは属人化している部分が多く、システマチックな横展開ができていない。日常業務についてはマニュアルがあり、それに沿えば一応の仕事はできるが、更新は早くない。IT化は進んでいない。

 この金融機関は典型的な日本の大企業病にかかっていると言えそうです。現段階では過去からの蓄積や知名度、さらには当局の規制などのおかげで一定の市場地位を築けていますが、中長期的に見ればかなり危険な状況と言えるでしょう。手遅れになる前に大胆な組織変革が待たれるところです。

 なお、7Sの分析ではそれぞれの要素が整合していることが大事とされていますが、単に整合しているだけではなく、先に示したマッキンゼーのように、高い次元で整合していることが望ましいです。この金融機関の場合、本来ポテンシャルのある人材を抱えているにもかかわらず、戦略がありきたりで、全体のモチベーションも低く、官僚的で、従業員の能力も伸びていません。ある意味で7Sが整合しているとはいえるのですが、この状態は当然望ましいものではありません。

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