7Sを端的に学ぶ

 フレームワーク開発に関与したコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーを7Sで分析してみましょう。同社は世界でも戦略系コンサルティングファームのリーダー的地位にあり、優秀な人材、さらにはOBやOGが多いことでも知られています。ちなみに日本支社の2021年の新卒採用は、33人中、東京大学29人、京都大学3人、名古屋大学1人と、難関大学出身者に片寄っていることでも話題になりました。

 なお、同社はグローバルカンパニーであるため、グローバル本社と日本支社では多少分析結果は異なる部分もありますが、同社の「One Firm Policy」の方針もあるため、ここではグローバル本社と日本支社はほぼ同じものとして議論を進めます。

Strategy:顧客の課題に徹底的に寄り添い、最高レベルのソリューションを提供する。ターゲットは主に大企業。グローバルの専門知識とローカルの知見を組み合わせる。近年はデジタル事業に注力。

Structure:プロジェクトチーム型で、案件に応じて適宜チームが組成される。非常にフラットな組織。パートナー(共同経営者)がプロジェクトの成果に責任を持つ。コンサルタントは産業別グループや機能別グループといった緩やかなグループに所属することで専門性を磨く。

Systems:人事制度に特に特徴がある。「アップ・オア・アウト(昇進できないなら去らざるを得ない)」が徹底している。評価はフェアではあるが、結果を出さないと会社に残ることは厳しい。給与レベルは高め。

Shared Value:顧客第一主義。優秀な人材を集めることが高いサービスにつながるという意識が徹底している。

Style:人材を育てる組織文化がある。ハードワークは当たり前。プロアクティブ(積極的)に動くことが推奨されている。上下関係の意識はあまりなく、若手とシニアメンバーのコミュニケーションも多い。

Staff:優秀で向上心の高いプロフェッショナル人材が多い。経営学修士号(MBA)保有率も高い。ただし、入社数年の「見習い期間中」はその域に達していない人材もいる。

Skills:独自のフレームワークなどを多数開発。産業別グループや機能別グループがさまざまな知見を蓄積している。グローバルな横展開が得意。

 このように見ると、通常の企業とは大きく異なる特性があることが分かります。「アップ・オア・アウト」の制度などは非常に特徴的です。ただし、そうした厳しさがあるからこそ成長へのプレッシャーが強くなり、良いアウトプットが出せるとも言えます。ある程度の能力があり、向上心のある人にとってはチャレンジのしがいのある場を提供していると言えそうです。近年、日本において学生の就職先としてコンサルティング業界が注目を集めるようになった理由もそうした部分にあります。

 このケースでは、全体的に7Sが高い次元でよく整合していることも見て取れます。一方で、課題はデジタル化への対応かもしれません。デジタル化案件についてももちろん取り組んではいるものの、特に日本支社ではまだ人材やスキルの蓄積が十分でないという意見もあり、そのための変化が必要かもしれません。

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