「7S」は、企業戦略の中でも「組織」についてその特徴を分析するビジネスフレームワークです。7つの要素それぞれの特徴を見たり、そのバランスや整合性を確認したりします。優れた企業では、各要素がお互いを補い、強め合いながら戦略の実行に向かっています。

7S分析とは

 「7S」はもともと、著名コンサルティング会社・米マッキンゼー・アンド・カンパニーのメンバーであるロバート・ウォーターマン、トム・ピーターズ、ジュリアン・フィリップスが、論文“STRUCTURE IS NOT ORGANIZATION”の中で「新しい組織の見方」として紹介したものです。そのため、「マッキンゼーの7S」と呼ばれることもあります。

 当初、真ん中のShared ValueはSuperordinate Goals(会社としての上位の目標)として提唱されましたが、今ではShared Valueとするのが一般的となっています。

 7Sは、以下の7つの要素に示されます。

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・ハードの3S

Strategy(戦略):競争に勝ち、業績を上げるための大局的な方向性です
Structure(組織構造):組織図の切り型(機能別、事業部別など)や階層数などの組織図上の特徴です
Systems(経営システム):人事制度、管理会計制度、意思決定ルール、会議体など、組織を運営するための仕組みです

・ソフトの4S

Shared Value (共通の価値観):組織に根付いた価値観です。例えば、社会的善を旨とする、顧客第一主義などです
Style(経営スタイル・組織文化):企業で受け入れられやすい考え方、行動です。現場重視、スピーディーに動く、目標必達にこだわるなどです
Staff(人材):従業員の特性です。能力面やメンタリティーの特徴、モチベーションの高低が特に重要です
Skills(組織のスキル):組織として持つ能力、コア・コンピタンス(企業独自の強み)です。商品開発が巧み、広告がうまい、グローバルM&A(合併・買収)にたけているなどです

 7つのSのうち、Strategy、Structure、Systemsはロジカル(論理的)に構築しやすく、また外形的にも分かりやすいことから「ハードの3S」と呼ばれます。それに対して、残りの4つはやや曖昧かつ人の意識やスキルといった外形的には分かりにくい要素から成るため「ソフトの4S」と呼ばれます。

 通常、ハードの3つのSは、経営陣に変えようとする意思やプランがあれば、変更することが比較的容易ですが、ソフトの4つのSは、人の意識やスキルレベルなどが強く絡むだけに慣性が働き、強制的にまたは短時間に変更することは難しいとされます。

 なお、図1に示した7Sの並べ方は文献によって差があります。ただし、Shared Valueが真ん中に来ること、そしてハードの3つのSを上側に置くことは共通です。また、7つの要素自体は不変です。

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