変化する年末商戦

 円“安”で恩恵を受ける人は少ない半面、“安”売りは皆一様に気持ちが上がるものだ。11月下旬からブラックフライデー、クリスマスセール、年末セール、新春セール、旧正月セールと、セールが立て続けに開催される。5年ほど前から日本にも浸透し、街中で目にすることも増えたブラックフライデー。これまた実にややこしい。

 今年のセール期間中、わりと目にすることが多かったのが「グリーンなブラックフライデー」だ。短い単語の中に緑と黒という2つの色が並んだ。

 サステナビリティー、持続可能な社会の実現を強調したグリーン。そしてブラックフライデーの黒。エコ関連の商品が並ぶECサイトやリアル店舗の棚の色は、環境対策をイメージさせる緑(グリーン)で統一されるものもあった。

 「景気の半分以上は、個人消費で決まる」。これは、私が働く資産運用業界で、1年を通じて最も使うフレーズの1つだ。だから、その年の年末商戦の行方は、業界最大の関心事だ。

 とりわけ本場米国の年末商戦「クリスマス商戦」の結果は、間接的に世界景気の動向を左右する。米国でこの時期にモノが売れれば、巡り巡って世界中でモノが売れるという実にシンプルな動きだ。

 米国では毎年、11月の第4木曜日が「感謝祭」となる。親しい友人や親戚と集まってにぎやかに七面鳥を食べるあの日だ。家族愛や夫婦愛、きょうだい愛などを確かめ合いながら、一緒に時間を過ごす。

 米国ではワクチン接種が進み、例年通り5000万人近くの人々が大移動する。現地ではクリスマスや新年を迎える日本のお正月よりも大事な日だと、米国の友人から聞いたことがある。

 そんな感謝祭当日から12月24日のクリスマス・イブまでをクリスマス商戦と呼ぶ。感謝祭翌日の金曜日は休暇を取り、土日と合わせ4連休にする人は非常に多い。後に11月の第4金曜日が、売れ残った商品の一大セールの日「ブラックフライデー」となった理由がこれだ。米国の小売業界が最も売り上げを伸ばす日となったブラックフライデーは、今や「ビッグフライデー」の様相を呈している。

 クリスマス商戦の前哨戦であるブラックフライデー・セールは、日本でもすっかり定着した。ブラックフライデーは本来、感謝祭翌日の金曜日を指すのだが、これを完全に無視。複数日にわたり一大セールを展開するのが今では当たり前で、12月に入ってもブラックフライデーを続ける店もある。

 ちなみに、ブラックフライデーの由来には諸説ある。オンラインなどない時代、店舗の好調な売れ行きを意味した「黒字の金曜日」を由来とする説。ブラックフライデーが始まったとされる1960年代前半のフィラデルフィアの地元警察が「大勢の買い物客で警備が大変、ブラックな気持ちだ」と発言したことを由来とする説。いずれもありそうな話だ。

 そして日本のブラックフライデーには、もう一つややこしいことがある。そのセール期間だ。11月23日は「勤労感謝の日」。この日は1年で最後の祝日だ。

 今年の勤労感謝の日は火曜日。小売業界の関係者が気づいたのだろう。ブラックフライデー・セールを勤労感謝の日にこだわらず、11月20日の土曜日から始めてしまえばいいのではないかと。小売業界は「顧客の囲い込み」や「早めに動くこと」が大事。気づけば、本場米国のブラックフライデーより1週間も早く、その日を迎えてしまった。

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