インバウンド復活の鍵は、やはりあの国

 思い起こせば、15年当時のインバウンドの勢いは想像を超えていた。その頃、私は現在の勤務先で投資信託の直販事業を立ち上げたばかり。47都道府県の主要都市を巡る「始めよう投資信託セミナー」で、日本中を飛び回っていた。

 悩みの種は、インバウンドの急増でホテルの客室に空きがなかったことだ。まず宿泊先を押さえてから、セミナーの開催スケジュールを決めるといった、本末転倒とも言える状況だった。

 その年、インバウンドは1973万人に達した。20年に2000万人という目標を5年も前倒しして達成できそうな勢いだった。そこで政府は16年の春、インバウンド目標を20年4000万人、30年6000万人と上方修正。東京2020オリンピック・パラリンピックによる絶大な集客力と、今ほどではないが当時進行していた円安という2つのインバウンド増加要因はそろっていた。

浅草寺に外国人観光客が戻ってくるのはいつになるのだろうか(写真:PIXTA)
浅草寺に外国人観光客が戻ってくるのはいつになるのだろうか(写真:PIXTA)

 だが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、20年のインバウンドは412万人と、1998年の水準まで逆戻りしてしまった。そして2021年の実績は25万人。そこからは、誰もがインバウンドという言葉を忘れかけただろう。

 日本の観光ビジネスの実力を測る上で参考になるのが、コロナ禍前の19年の実績だ。19年の訪日外国人観光客数は3188万人で、世界第12位。世界トップはフランス、次いでスペイン、米国、中国と続く。同年の観光ビジネス収入では、461億ドルで日本は世界第7位。トップは米国で、スペイン、フランス、タイの順に並んだ。

 19年の訪日外国人客の旅行消費額は、円換算で4兆8113億円。1人当たりの支出は15万8458円だ。日本人の宿泊を伴う国内旅行の1人当たりの支出は5万5054円だから、およそ3倍ものお金を使っていることになる。インバウンドの経済効果の高さを示すこの数字、旅行先で気持ちも財布のひもも緩んでしまうのは万国共通のようだ。

 訪日客の内訳をみると、トップは中国で959万人。これに韓国、台湾、香港を加えると、インバウンド全体の7割を占めた。まずは中国をはじめとする、この地域からの観光客に期待したいところだが、中国が今後も「ゼロコロナ政策」を堅持するとなると、以前のような活況には容易に戻らない可能性が高い。

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