東京証券取引所と聞いて、どのような光景が目に浮かぶだろうか。多分、40代半ば以上の多くの人は、企業名を表す手サインで株の売買注文を出す「場立(ばた)ち」と呼ばれた証券マンの姿、そして彼らが激しくもみ合う立会場と答えることだろう。しかし、当時の時代を象徴したあの光景は、1999年にその幕を閉じた。

 翌年の2000年に「東証アローズ」に名を変えたこの場所は、充実した見学コースの機能も備えている。当時の取引所のにぎやかな記憶がふとよみがえった私は、同業だが世代の異なる彼女とここを訪れた。

 「当時の『場立ち』の手サインやってみて。私、企業名を当ててみるから」
 「親指と小指を立てて耳の横に、これは?ミレニアル世代には、ちょっと難しいかな」

 「……分かったわ。それ、昔の携帯だから『NTT』でしょ」
 「携帯じゃなくて、電話の受話器なんだけど(笑)、正解。じゃあ、これは?」とカメラを持ってシャッターを押すしぐさ……。

 「カメラで撮影してるから『キヤノン』。でも、今はスマホ1つで大丈夫だけど(笑)」

 私と30代女性の頭上には、銘柄と株価が表示される円形の電光掲示板チッカーがぐるぐると回る。その回転スピードと目の前の彼女との年の差に、時の流れの速さを感じざるを得ない自分がいた。前回、この場所を訪れたのは信託銀行の資産運用部門に配属されたばかりの今から約30年も前のこと。無理もない話だ。

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