「狼狽売り」から始まる地政学リスクとマーケットの関係

 歴史を振り返ると、地政学リスクが表面化した直後のマーケット、特に株式市場ではいつも同じ現象が起きる。株価が急落し、その動きに慌てて売る、業界用語でいう「狼狽(ろうばい)売り」が発生し、マーケットが下落するのだ。

 リスクが顕在化したばかりの初期段階で、事実を正確に捉えて、国と国との今後の関係は? 世界的な影響は? 経済活動の変化は? 資金の流れは? など先行きを見通すことは難しい。

 状況が不透明な中で、多くの投資家は、手持ちの株式を売って現金化する。下がったときに買って、上がったときに売るのが投資の大原則であることは重々承知だが、いったん売って様子を見たい気持ちもよく分かる。

「有事の金(ゴールド)買い」といわれた時代が長く続いた。ただ、世界的な金融緩和で世の中に投資資金があふれた近年、株価が下がれば「金の価格」も下がり、株価が上がれば「金の価格」も上がることが増えた。

あまりにも上がり過ぎた金のマーケット。最近では、買い取り業者がショッピングモールにも出店している(写真:PIXTA)
あまりにも上がり過ぎた金のマーケット。最近では、買い取り業者がショッピングモールにも出店している(写真:PIXTA)

 コロナ禍は、金融市場の過去のセオリーも覆したと思っていた直後、今起きている「地政学リスク」は、株価が下がる過程で、「金の価格」を上げる従来の動きを再現した。

 思えば実用性がなく、非日常的な「金」は、身の回り品の買い物には使えない。現金化の対象が「米国ドル」や「日本円」など、流通性や信用力において有利な国の通貨に変わるのが当然とも思えるが、「地政学リスク」となると話は別なのか、一筋縄ではいかないマーケットとなった。

 地政学リスクは表面化してすぐの時点では正体不明であるが、時間の経過とともに分析され理解され、先行きの予測まで可能になっていく。当初抱いていた不安感や危機感は薄れて、すっかり日常化してしまう。

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