ウクライナ情勢がもたらす投資課題

「地政学」とは、国と国との地理的な条件から、国際的な関係やその影響をひもとく学問のこと。地理的な条件によって引き起こされるリスクが「地政学リスク」だ。日本に住む人の多くは、すぐ隣の朝鮮半島が頭に浮かぶだろう。

 ロシアがウクライナを敵対視して、態度を硬化させる理由は、ざっくり言えばウクライナが欧米諸国と仲が良過ぎるからだ。好きで気になる相手が他の人と仲良くしていると面白くないのは、国も人も同じだ。

 ウクライナが欧米の軍事同盟、NATO(北大西洋条約機構)へさらなるアプローチをしたことが、ロシアの感情をますます逆なでしてしまった。

 ロシアとウクライナの微妙な関係は、実は今に始まったことではない。

 08年に、いわばウクライナ紛争の前哨戦ともいえる南オセチア紛争が勃発。14年に衝突した際には、ウクライナの領土だったクリミア半島がロシアに併合された。当時のウクライナ政権が欧米寄りであったことが要因だ。以来、両国の小競り合いが続いた末に、ついに開戦してしまった。

 ロシアの厳しい寒さは、波立つ海も凍らせてしまうほどで、冬場は使用できない港も珍しくない。広大な国土を有するが、人が住むエリアは限定される。一方、隣の欧州の国々は概して気候は穏やかで、年間を通じて安定的な経済活動が可能だ。人が住むのに適したエリアも広い。

 このちょうど境目に位置するのがウクライナだ。昔から、異なる環境や思想が接する地域では紛争が起きやすい。地政学リスクはさまざまな分野に影響を及ぼすが、その代表的なものの1つが株式市場など「マーケット」の動きだ。

 今年1月下旬以降の日米株式市場は、全体として下がりつつ、上にも下にも大きく動く日々が続いた。マーケットはさまざまな要因が複合的に絡み合うことで、その水準を形成するため、要因を1つに絞り込むのは難しい。

 12月末を会計基準とする米上場企業の決算発表の集中や、モノやサービス価格の歴史的な上昇(インフレ)率、米国の利上げ姿勢に伴う「円安・ドル高」の動きも重なった。そこにウクライナ情勢の緊迫化が伝われば伝わるほど、マーケットの動きは激しくなった。開戦で、地政学リスクの影響を受けたことは明らかだ。

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