ポテンシャルを阻害するコロンビアの根深き課題
新型コロナウイルス禍が一段落した今年、約3年ぶりに再訪した機会に改めてオスカーさんと腹を割って話をする中で見えてきたのは、コロンビアのコーヒー業界が抱える問題点だった。
思えばその兆候は、ダイレクトトレードを始めた05年当時からすでに表れていた。例えばロス・ノガレス農園の豆を買い付けるために現地に足を運んだのに、接待じみた会合に招かれた揚げ句に他の生産者の豆を押し付けられたり、現地でカッピングしたサンプルよりも品質の劣る豆が多く含まれた状態で送られてきたり。またオスカーさんと話を直接したいのに、いつも間に不必要な仲介が入ることもずっと気がかりだった。


オスカーさんとの話し合いを経て理解したのは、これら一連の不審点の根底には、政治力のある声の大きい生産者が優遇されるような業界の旧態依然とした体質が大きく関与しているということだ。
農業分野就労者の約3割がコーヒー栽培に携わるといわれるコロンビアにおいて、全国約56万世帯の生産者全体を豊かにするためのコマーシャルコーヒー的アプローチと、純粋に品質で評価すべきスペシャルティコーヒーの世界には、大きな隔たりがある。
真面目な生産者の足を引っ張り、一部の既得権益者が労せずして利するような不透明な仕組みはスペシャルティコーヒーの世界では百害あって一利もない。
ロス・ノガレス農園内のある壁には、収穫したコーヒーチェリーを手にほほ笑むリカウルテさんの写真が大きく掲げられていた。「コロンビアっていいコーヒーだな」。05年のCOEで彼の豆を初めて味わった日を思い出す。コロンビアではおいしいコーヒーがたくさん作られている。素晴らしいコロンビアコーヒーをもっともっとダイレクトに消費者の皆さんに味わっていただきたいと、私は強く願っている。
取材・文/永島岳志
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