味が先か、エコが先か、ハニープロセス誕生の背景

 自由を獲得したマイクロミルでは、実験精神にあふれたさまざまな生産処理が試みられた。その最たる成功例がハニープロセスだ。

 コーヒーの生産処理の方法は二つに大別できる。一つは収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させて、あとから果肉とパーチメント(内果皮)をまとめて脱殻(だっかく)するナチュラルと呼ばれる方法。もう一つがパルパーという機械で水流を利用して果肉を除去したあとに発酵槽に入れてミューシレージ(粘液質)を分解し、それから乾燥して脱殻するウォッシュトと呼ばれる方法だ。

 対するハニープロセスはナチュラルとウォッシュトのちょうど中間。コーヒーチェリーの果肉を除去し、ミューシレージが付着した状態で乾燥させるのだ。コスタリカではこのミューシレージを「ミエル(ハチミツ)」と呼ぶことからその名が付いた。

ロス・アンヘレス マイクロミルのハニープロセスの豆
ロス・アンヘレス マイクロミルのハニープロセスの豆
乾燥中のコーヒー豆の攪拌(かくはん)作業
乾燥中のコーヒー豆の攪拌(かくはん)作業

 一般的にウォッシュトがクリーンで酸を中心とした味わいになるのに対し、ハニープロセスはミューシレージを残すことで乾燥の過程で発酵が進み、よりナチュラルに近い甘味や質感を感じる仕上がりになる。研究熱心な生産者たちはその違いをミューシレージの除去率によってさらに細分化し、それぞれの乾燥後の色の状態からブラックハニーやレッドハニーといった呼び名を付けて世に送り出したのだ。

 このようにハニープロセスはマイクロミルによる付加価値創造の好例としてとかく語られるが、加えて私はエコロジーの観点からもハニープロセスが受け入れられた要因を捉えておきたいと思う。

 冒頭で述べた通り、コスタリカは世界をリードする環境保護先進国。そのため生産処理の過程で大量の水を必要とし、また廃水の問題も抱えた従来のウォッシュトはかねて厳しい目を向けられていた。精製過程でほとんど水を使用しないハニープロセスは、環境面による社会的要請から各地のマイクロミルに広まっていったとみなすほうがむしろ妥当な考察かもしれない。

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