世界のグルメを虜にするケニアコーヒー

 東アフリカの中央部に位置するケニア。国土のほぼ中央を赤道が通過するが、首都ナイロビを含めた内陸部の多くが標高1000メートル以上に属しているため、その地理から思い描くイメージとは裏腹に年間を通じて過ごしやすい気候の国だ。

欧州を中心にコーヒーの評価が高いケニア。肥沃で水はけのよい火山性土壌でグルメを魅了するコーヒーを生産する(写真=Shutterstock)
欧州を中心にコーヒーの評価が高いケニア。肥沃で水はけのよい火山性土壌でグルメを魅了するコーヒーを生産する(写真=Shutterstock)

 コーヒーの主な栽培エリアは同国最高峰のケニア山(5199メートル)の南麓の、1400~2000メートルの高地に広がっている。肥沃で水はけのよい火山性土壌はコーヒーの栽培に最適で、ニエリやキリニャガ、エンブといった地区が有名産地として名を連ねている。

 欧州を中心にケニアコーヒーの評価はすこぶる高いが、日本に目を向けるとその事情は幾分異なる。日本国内では隣国・タンザニアのキリマンジャロの銘柄があまりにも有名で、同じアフリカ産のケニアコーヒーは長らくその後塵(こうじん)を拝しているのが現実だ。

ケニア山の南麓にコーヒーの栽培エリアが広がっている
ケニア山の南麓にコーヒーの栽培エリアが広がっている

 キリマンジャロの躍進の背景には、1953年に日本公開されたアーネスト・ヘミングウェイ原作の映画『キリマンジャロの雪』のヒットが一因と言われている。その後も日本のコーヒー界隈(かいわい)のタンザニアへの厚遇は続いたが、時を同じくして舌の肥えた欧州の視線の先には常に別の国があった。そう、ケニアである。

 世界のグルメを虜(とりこ)にするケニアコーヒーの魅力は、その特徴的な酸の質にある。コロンビアやグアテマラの酸が柑橘(かんきつ)系であるのに対し、ケニアのそれはブラックベリーやブラックチェリー、クロスグリといった濃厚で独特な癖のあるベリー系だ。ワインで例えるならばフランスやイタリアの最高級赤ワイン。最高品質のケニアコーヒーは、そうした美辞とともに称賛される特別な存在なのだ。

 深煎りのコーヒー文化が根付く日本で酸が注目され始めたのはつい最近のこと。長年にわたるケニアコーヒーへの関心の低さは、キリマンジャロのブランディングの功にもよるが、こうした酸に対する捉え方の違いも少なからずあったと言えるだろう。

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