「いったい何屋さんを目指しているの?」という辛辣な言葉が刺さる

 「bistroあわ」を含む9店舗を統括するDDホールディングスの第3営業本部、第3事業部部長の磯﨑俊樹氏に話を聞いた。

2020年、最初の緊急事態宣言時の状況は。

磯﨑俊樹氏(以下、磯﨑氏):20年4月、緊急事態宣言が初めて発出され、当社グループの店舗は東京都の指導に従い、全てのお店を営業休止した。その間は、スタッフは自宅待機で体を休めてもらったが、我々管理者はそうはいかなかった。2週間に1度のペースで定期的に各店舗をチェック。空調や機器などがきちんと稼働するか、また虫がいないかなど衛生面でも見て回った。

 その頃の麻布十番は、ゴーストタウンのように人がいなかった。

5月14日に緊急事態宣言が解除された。「bistroあわ」立て直しのためにやったことは。

磯﨑氏:最初に東京都から提示された飲食店を営業するための条件が午後8時閉店と、酒類の提供を控えること。酒類が売り上げの約7割を構成するこの店にとって、大変厳しいスタートになった。まずは営業時間を根本的に見直した。次に、今までやっていなかったモーニングタイム、ランチタイムの営業を実施。モーニングタイムではコーヒーを始めることにした。道を隔てて向かいにはホノルルコーヒーさん、近隣にはスターバックスさんや上島珈琲店さんなど、麻布十番には強力カフェ店がひしめいている。

 ただ逆にいえばカフェのニーズが高い証でもある。幸い当社グループはカフェ業態もやっていたのでノウハウや商品供給には困らなかった。メニュー開発など、全くのゼロからのスタートではなかったのが唯一の強みだった。

ハンドドリップコーヒー。ライトローストかフルローストかを選べてイートインは418円(テークアウト410円、共に税別。以下同)人気の厚焼き玉子サンド(ハーフサイズ330円、フルサイズ560円)。ドリンクとのセットは660円から
ハンドドリップコーヒー。ライトローストかフルローストかを選べてイートインは418円(テークアウト410円、共に税別。以下同)人気の厚焼き玉子サンド(ハーフサイズ330円、フルサイズ560円)。ドリンクとのセットは660円から

磯﨑氏:カフェ業態で成功していたサンドイッチ3種類を導入。料理人による改良も加えて、ふわふわの厚焼き卵をサンドイッチにした厚焼き卵サンドを発売した。しかし当初は、「bistroあわ」の夜のイメージが強かったのか、近隣のお客さまから「ビストロなのにコーヒー?」「いったい何屋さんを目指しているの?」といった手厳しいご意見もいただいた。

 ただ味には自信はあったし、業態を変えなければ生き残れない事実があった。だから、いつか浸透すると信じて続けた。スタッフがSNS(交流サイト)を通じて情報を拡散。口コミも広がっていき、徐々にモーニングの認知度が上がってきた。

ランチはどうだったか。

磯﨑氏:当初は牛ステーキや牛カツ、牛しゃぶしゃぶなど男性をターゲットにしたガッツリ系の牛専門店のような肉メニューで攻めた。その中から人気メニューだった牛サーロインのステーキ(1480円、税別。以下同)、牛サーロインのカツレツ(1480円)に絞り込み、フレンチトーストと燻製ベーコンのサラダプレート(1000円)、彩り野菜のスパイスチキンカレーとミニサラダ(1210円)、マグロとアボカドの野菜たっぷりポキ丼(1280円)など女性にも好まれる品目を加えて、現在に至る。

 同時にウーバーイーツによるデリバリーも始めたが、そちらではスタート時の肉料理ラインアップが好評で、そのなごりからランチでは出していない豪州産牛サーロインカツ丼(肉300g)ダブル(2350円)や豪州産牛サーロインステーキ丼(肉300g)ダブル(2330円)が人気メニューとして残った。

感染予防の対策は。

磯﨑氏:グループ全体で細かく指示が来ていたのでそれに合わせて徹底して行った。入り口は常に全開にしているため、換気について心配はなかった。

入り口が全開で開放感がある店内。テーブル上にはアクリル板が立てられ、ハイチェアも置かれた。立ち飲み業態とのさよならの瞬間でもあった
入り口が全開で開放感がある店内。テーブル上にはアクリル板が立てられ、ハイチェアも置かれた。立ち飲み業態とのさよならの瞬間でもあった

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