滞店時間は最短30分、驚異の回転率8回
席数31だと、昼の部で5回転、夜の部で4回転していることになる。1日の回転率は8回、まさに驚異の回転率だ。お客さまの滞店平均時間は昼の部で45分、夜の部で50分。最短時間は30分である。もっと多くのお客さまが来店できるように営業時間の延長などは考えなかったのか。
山本氏:料理のクオリティーをしっかり保つのと、スタッフとのコミュニケーションを取ってパフォーマン力を落とさせないことを考えると、この時間配分がベストだ。一度いらしたお客さまに満足してもらい、また足を運んでもらうことが大切なのでこの営業時間で続ける。
現在、月間売り上げはどうか。
山本氏:月額1000万円をキープしている。水曜日を定休日にしているので月稼働25日として1日売り上げ40万円というところだ。1日の受け付け人数を決めているので大きく売り上げが伸びることはないが、下がることもないので安定している。1500円という価格も食材を絞っただけではなく、回転率が良いからこそできているコストパフォーマンスだと思っている。
週イチ休みで、月額1000万円クリアは大変優秀な繁盛店だ。それと食べる当日に一度、お店まで訪問してもらう「当日記帳方式」 なる入店方法を取っているがその狙いは。
山本氏:ネット予約を取り入れず、当日記帳方式にしている理由は、地域のお客さま(近所で働いている人、近所に住んでいる人、近所に用事のある人)を有利にして、少しでも繰り返し通っていただけるようにするためだ。ネット予約にすると簡単に予約ができる分、簡単にキャンセルもできるし、遠方のお客さまからの予約が多く入り、近隣のお客さまが入れなくなってしまう。遠方の方は1回きりのことが多いけれど、近隣の方には繰り返し通っていただける可能性がある。地域に愛される店として長く続けていきたいので、相対的に近隣の方にとって使いやすい店であるための選択だ。
また、連続で炊飯をしてこその「いつでも炊きたて」なので、連続でお客さまが来店される状況をつくるためでもある。
コロナ禍でのオープンとなった。特に1号店である吉祥寺のオープンは2020年4月、緊急事態宣言初発時とぶつかった。苦労はなかったか。
山本氏:20年の4月、5月はさすがにお客さまも敏感になっていたのでテークアウトのみ行い、イートインがスタートできたのは6月からだった。ただその2カ月間はSNS(交流サイト)を積極的に拡散させたので、イートインを開始する前にフォロワー数が2000人になっていたのは心強かった。徐々にお客さまが入るようになり、夏に入った7月ごろからは満席になるようになった。なお焼きたてを食べてもらうコンセプトの店だったので、イートイン営業を開始して以降は、テークアウトは一切やらなかった。
コロナ禍での予防対策をどのようにしたか。
山本氏:スタッフには自宅検温をしてから出勤させ、アルコール消毒、マスク着用など基礎的な対策は徹底した。またハンバーグを焼いている煙を全て吸い込む強力な巨大ダクトを設置しているため、換気は大変良い。これは意図したわけではないが、カウンターのみの席構成が「ひとりハンバーグ」のスタイルで、うまいハンバーグを集中して召し上がってもらう雰囲気になり、それで自然に黙食となり、会話はしても騒ぐ人はいない。

吉祥寺、渋谷と成功した。今までになかったハンバーグの提供スタイルが多くの人たちに受け入れられ、人気店の宿命なのかついには模倣店まで出てきた。それについてと、今後の展望について聞かせてほしい。
山本氏:模倣すること自体は、良いものが広がるという点では、お客さまにとって良いことだし、そのようにブラッシュアップして発展してきた業界なので良いことだと思う。ただ、お客さまのために良いお店をつくろうという思いがなく、流行しているものを取り入れて売り上げを狙うだけの店づくりの場合は、お客さまにとって良いものとして広がらない可能性があるため、この点については残念である。
今後の展開として、まずは吉祥寺と渋谷をしっかり守って大切に継続していくこと。つぎに将来的には海外へ現地パートナーを見つけてロイヤルティー契約でライセンス出店していきたい。そのためにも海外の人たちに知られている国内の主要都市に店舗展開をしていく。京都、福岡、札幌、大阪を考えている。特にインバウンド客が多い京都には、今年の秋ごろまでに出店できればと思っている。

取材を終えて
飲食店がヒットすると、リーシング(商業用不動産の賃貸サポート)での声かけが増えて、多店舗展開になることが多い。しかし山本代表は至って慎重だ。吉祥寺・渋谷で成功したら、新宿・池袋・品川・銀座・恵比寿など都内のターミナル駅への出店かと思いきや都内への出店は、よっぽどやりたい物件が出てこない限り、考えてはいないそうだ。理由は同じ地域に何店舗も出すと、お客さまが分散してしまうリスクがあるということと、「挽肉と米」は席が埋まり続けないと挽肉のロスが出てしまう難しい業態だからだ。
だからこそ吉祥寺と渋谷を大切にしていることがよく分かる。また各店舗に通うお客さまに対して魅力と価値を上げるために、最前線で働くスタッフたちのクオリティーの向上が急務だとも考えている。また優秀な人材が飲食業界から離れないように、店舗の人件費に使えるキャパシティー確保のために店舗以外の収益モデルも計画中だとか。飲食店が繁盛し続けるためにいちばん大切なこと。それはお客さまとスタッフのことを常に考えることに違いない。
「挽肉と米 京都」の出店が待ち遠しい。
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