2023年5月8日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行した。季節性インフルエンザなどと同じように、今後の感染対策は個人の判断に委ねられる。飲食業界にとっては、大きな追い風になる一方で、3年以上続いたコロナ禍により、飲食店で働いていた人たちが他業種へ流出。飲食店の人手不足は深刻だ。そんな中、独自のルートで人材確保を続ける飲食店があるという噂を聞きつけた。

 都内で飲食店を経営する知人が、「時給1200円でアルバイトを募集しても、まったく集まらない」と嘆いていたのを思い出した。新宿などの都心では、時給1300円や1400円で求人を出しても集まらないという話もある。

 飲食業界は、コロナ禍前から慢性的な人手不足に陥っていたが、コロナ禍でより一層人材確保が難しくなっている。コロナ下における営業規制や休業により、アルバイトやパートを解雇せざるを得なかったが、営業を再開できるようになっても、一度離れてしまったスタッフは他業種に移ってしまい、戻ってこないのが現状だ。

 帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月実施)」によると、非正社員の人手不足割合は旅館・ホテルに次いで飲食店が多く、80.4%という高い数値を示した。どこの飲食店も人材確保が最大の悩みだろう。そこで、求人サイトなどに頼らず、独自の方法で人材を確保している店がある。東京・四谷三丁目駅のそばにある大衆向けの「炭火焼き鳥 どげん」本店だ。

 今年で20周年を迎える老舗繁盛店で、地元周辺に住む常連客をはじめ、お酒や焼き鳥好きの人たちが足しげく通っている。また業界人や俳優などの著名人が来店し、お店の雰囲気になじんで飲んでいるのは、店が醸し出すアットホームさのおかげに違いない。さらに深夜帯には同業者が増えるのも、価格のリーズナブルさとうまさの証しといえるだろう。

左の皿の上から、塩焼きの「なんこつ(やげん)」(130円、以下価格は全て税込み)、「ぼんじり」(140円)、「ネック」(140円)、「一番搾り樽詰生(小)」(420円)。白い皿の左からタレ焼きの「レバー」(100円)、「ねぎま」(140円)、「しろ」(120円)
左の皿の上から、塩焼きの「なんこつ(やげん)」(130円、以下価格は全て税込み)、「ぼんじり」(140円)、「ネック」(140円)、「一番搾り樽詰生(小)」(420円)。白い皿の左からタレ焼きの「レバー」(100円)、「ねぎま」(140円)、「しろ」(120円)

 場所は、東京メトロ丸ノ内線の四谷三丁目駅3番出口を上がって、JR四ツ谷駅方面に向かって新宿通りを直進。2分ほど歩くと見える「びっくり寿司」の手前の角を右折する。1ブロック目の角、コインパーキングの向かいにどげんがある。

「どげん」の外観。やどかりのような色味が独特な雰囲気を醸すタイル状の建物。黄色いちょうちんと白いライトスタンド看板が目印
「どげん」の外観。やどかりのような色味が独特な雰囲気を醸すタイル状の建物。黄色いちょうちんと白いライトスタンド看板が目印
店内には6人座れるカウンター席と、6人席、4人席、2人席のテーブルが各1つずつ、奥には最大5人収容できる小上がりの座敷がある。合計23人が着席可能だ
店内には6人座れるカウンター席と、6人席、4人席、2人席のテーブルが各1つずつ、奥には最大5人収容できる小上がりの座敷がある。合計23人が着席可能だ

 運営しているのは、商楽(新宿・四谷)。店名は、代表の西添武(にしぞえ・たけし)氏が同店を立ち上げる前に、福岡の焼鳥屋で修業していたことが由来だ。福岡弁の「どげん(=どんなに、どんな風に、という意味)」を屋号にしたのだという。

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