機動力があり、初期投資が抑えられる「キッチンカー」が注目されている。今回はキッチンカーが注目される理由と、新型コロナウイルス禍直前の2019年にキッチンカー事業を始め苦境に陥ったものの、名物の「だし巻き玉子」とお客との絆で乗り越えた赤坂のキッチンカーにスポットを当てる。
都心部でのキッチンカーと出店場所のマッチング事業を行うMellow(メロウ、東京・千代田)によると、23年2月28日現在、東京都のキッチンカー数は5621台と過去最大だという(東京都福祉衛生局による食品衛生施設数の速報値をMellowが集計)。
キッチンカーが増えている理由は大きく3つある。1つ目は、固定の店舗を開業するよりも初期投資額を3分の1程度に抑えることができる点だ。2つ目は、家賃がかからないために、ランニングコストが低い点だ(ただし、キッチンカーを駐車させる場所や仕込み場所のための経費は必要)。1~2人という最小限の人数で運営ができるのも大きな強みだ。3つ目は、移動性を最大限に活用して広い商圏が望める点だ。
コロナ禍当初は、在宅ワークが増えたり、イベントが開催できなくなったりしたため、オフィス街やイベント会場、ショッピングモールなどに出店していたキッチンカーは打撃を受けた。その一方で、新たなニーズとして「住宅地での移動販売」も生まれている。
苦戦する飲食店が新たな売り上げを確保するために、固定の店舗に加えてキッチンカーを始める場合もあれば、固定の店舗を閉めてキッチンカーでの営業に専念するなどさまざまなケースがある。たとえば東京・自由が丘の老舗人気中華料理店「南国飯店」は、21年2月に惜しまれつつ閉店したが、同年5月に毎週土曜日と日曜日のみ営業するテークアウト専門店として再開。加えて、平日はキッチンカー「南国飯店DELI」を都内に出店している。
こうしたキッチンカーの広がりに合わせて、アプリも登場している。「自分の仕事場の近くにどんなキッチンカーが出店しているか知りたい」「自宅の近所にどんなキッチンカーが出店するか、そのスケジュールを確認したい」「週に1回しか現れないお気に入りのキッチンカーを追いかけて弁当を購入したい」―― そんなときには、Mellowが運営するアプリ「SHOP STOP」が便利だ。ランチ難民を回避したいビジネスパーソンから支持を集めている。
キッチンカーの人気が高まる中、大変な苦労を重ねてこの3年間のコロナ禍をなんとか乗り越えてきたキッチンカーがある。東京・赤坂にある「創や まるひさ」だ。

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