ここで日本酒は2杯目になる。秋田県の「阿櫻(あざくら)」だ。原材米は秋田こまちを使用しており、味は長期低温発酵の秋田流寒仕込み(かんじこみ)の超旨辛口。

秋田流寒仕込みの「阿櫻」。超旨辛口でこちらも無濾過生原酒。日本酒好きにはらたまらないお酒だ
秋田流寒仕込みの「阿櫻」。超旨辛口でこちらも無濾過生原酒。日本酒好きにはらたまらないお酒だ

 阿櫻のペアリングの焼き鳥は、4品目の砂肝と5品目の胸肉。砂肝はコリコリ食感でクセになるおいしさで九条ねぎを乗せ、胸肉は、柔らかく、本わさびを乗せて最大限にうま味を引き出している。

超旨辛口の日本酒「阿櫻」との相性は抜群の砂肝と胸肉だ。焼き鳥も1品ずつ器に盛りつけると「逸品」に変わる
超旨辛口の日本酒「阿櫻」との相性は抜群の砂肝と胸肉だ。焼き鳥も1品ずつ器に盛りつけると「逸品」に変わる

 ペアリング最後の3杯目は、「TENZAN(正式名称は、天山マスク)」。実は日本酒ではなく「日本酒から生まれた焼酎」だ。天山の純米酒の酒かすを使っており、熟したりんごやすいかなど、フルーツを思わせるアロマティックな香りが特徴的だ。限りなく日本酒に近い味わい。焼酎だが、店主の判断で日本酒枠にしたそうだ。

「TENZAN(天山)」。プロレスラーのマスクをイメージさせるラベルが大変ユニークだ。よく見たら、ちゃんと「天山」と読める。蔵主もしくはデザイナーが大のプロレスファンなのかは不明。切子(きりこ)グラスで出してくれる
「TENZAN(天山)」。プロレスラーのマスクをイメージさせるラベルが大変ユニークだ。よく見たら、ちゃんと「天山」と読める。蔵主もしくはデザイナーが大のプロレスファンなのかは不明。切子(きりこ)グラスで出してくれる

 「TENZAN」のペアリングは、6品目の手羽先と7品目のつくねだ。手羽先は、とてもジューシーでうま味が凝縮している。生卵につけて食べるつくねが焼き鳥業界では主流の中、特製タレでじっくり焼いたつくねもうまい。

手羽先もつくねもボリュームがあるので、ラストの焼き鳥としてこの2品をセレクトしたのだろう。切子グラスで飲むTENZANは、よりおいしく感じる
手羽先もつくねもボリュームがあるので、ラストの焼き鳥としてこの2品をセレクトしたのだろう。切子グラスで飲むTENZANは、よりおいしく感じる

 締めの料理は、「名古屋コーチン地鶏そば」。通常メニューの3分の1の量なので、ペロリと食べられるだろう。ラストは汁物で締めたかった筆者にとっては、まさに、いたれりつくせりの内容だった。

 以上のように、前菜、椀、焼き鳥7品、締めのそば、ファーストドリンク、ペアリングされたお酒3種類全て込みで、5900円はかなり良心的な値段だ。お酒をもっと飲みたい人向けに、石川県の日本酒「観音下(かながそ)」と長野県の日本酒「神渡(みわたり)」の2杯、合計5杯のペアリングが楽しめる6900円のコース(料理は同じ)も用意されている。

 「箸を使って食べる焼き鳥」「日本酒とペアリング」で勝負をかける「肉和食Den」の田渕勇三オーナーシェフ(以下、田渕シェフ)にお話を伺った。

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