ラッセル「積極的に趣味をつくれ」

 まずラッセルの幸福論ですが、三大幸福論の一つといわれる彼の『幸福論』の原題は、The Conquest of Happiness、まさに「幸福の獲得」と表現されています。このタイトルの通りラッセルは、幸福というものは積極的に獲得していかない限り、手に入らないと考えていたのです。

 彼自身もともとは消極的で陰鬱な性格だったといわれており、幸福ではなかったのです。そのことに気づいてからのラッセルは、どんどん積極的になっていきます。勉強にも仕事にも、そしてもちろん恋にも。

「20世紀最高の知性」と呼ばれるほどの哲学者になれたのも、平和を主張する活動家として世界中に名を知られる存在になったのもそのおかげです。ちなみにその積極性からか、彼は4度も結婚しています。

 そんなラッセルの幸福論を方法論として一言で表現するなら、「何でもやってみる」ということだと思います。例えば、ラッセルが勧めるのは、たくさん趣味を持つことです。そんなことで幸せになれるのかと思うかもしれませんが、彼によると、趣味があれば近しい人の死さえ乗り越えられるといいます。

 確かに誰かを失ったときは、そのことしか考えられません。だからいつまでたっても不幸なのです。鬱々たる状況から脱したいなら、どこかで気持ちを切り替えるしかありません。そのきっかけになるのが趣味なのです。最近幸せを感じていない人、プライベートが充実していない人、ちょっと趣味をつくりたくなってきましたか?

 趣味に限らず、何かに対して情熱的になれれば、それでいいのでしょう。現にラッセルは情熱の人とも形容されるくらい、物事にのめり込むところがありました。私たちは何かに夢中になっているときは、幸福だとか不幸だとかという意識の外にいます。そういった状態が一番幸福なのです。

 逆に、退屈を感じると、人は幸福について考え始めます。これこそが不幸の始まりです。だから刺激を求めるのです。ラッセルにいわせると、王様が戦争をするのもこのせい。刺激に慣れ、より強い刺激を求める状態を、ラッセルは「コショウ中毒」と呼んでいます。

「多過ぎる興奮に慣れっこになった人は、コショウを病的に欲しがる人に似ている。そんな人は、ついには、他の人なら誰でもむせるほどの多量のコショウさえ味が分からなくなる」(『幸福論』)のです。だから他方で、そうならないように退屈に慣れることも必要だといいます。つまり、いかに自分の心をコントロールできるかが鍵なのです。

 ここにもまた、幸福は自分次第で何とかなるものだという彼の基本的な考え方が反映されているように思えてなりません。

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