キケロ「価値観の一致を探れ」

 大人になってから友達をつくるためには、同じ時間を長く過ごすのではなく、価値観の一致を探るほうがいいと唱えるのが、古代ローマの哲学者であるマルクス・トゥッリウス・キケロです。キケロいわく、人間には本来、関係が近くなると結び付く習性があるそうです。親戚がまさにそうだと指摘しています。

 もっとも、それは友情とは異なります。友情が芽生えるには、お互いに好意を持つ必要があると言うのです。この場合の好意とは、意見の一致のことを指します。そんなことなら簡単に友達になれそうですが、だからこそ難しいのです。なぜなら、大人は「本当はそうとは思っていない」場合でも、話を合わせてしまうことがあるからです。

 幸か不幸か、「ああ、この人は話を合わせているな」という態度はすぐに分かります。それでは友情に至りません。心から意見の一致を探る必要があり、そのためにはお互いに正直になるよりほかないのです。

 その正直さが信義を生み出し、信義に基づいて判断することで初めて、表面的なものではなく、意見が一致するか、いわば価値観が一致するかが分かるのです。これには時間をかければいいというものではありません。場合によっては、たった一度話しただけでも、友情が芽生えることもあるかもしれません。

 大事なのは、見極めです。キケロはその意味で、友達選びは慎重にしなければならないと言います。確かに、大人になると有用性のために近寄ってくる人、話を合わせる人は増えてきますよね。

 時間をかけて友達をつくるか、慎重に価値観の一致を探るか。いずれにしても昨今のお手軽なマッチングアプリにはどちらの要素も欠けているので、友達づくりには向いていないように思うのですが……。

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