人の営みの中で生まれた悩み。その悩みは、数千年前から哲学者たちも考えてきたものと同じ。毎回1テーマの現代人の悩み事を2人の哲学視点で切り取ります。モヤッとしていた悩みの解決策は、哲学に答えがあるはずです。

 才能か経験かという問いに、人生で一度は誰もが出くわすのではないでしょうか。特に才能に限界を感じた時、結局いくら努力してもだめなんじゃないだろうかと落ち込んでしまうのです。そうしてこの問いが頭をよぎります。

 どこの世界にも、あまり努力しているようには見えないのに、いい業績を出し続ける人はいるものです。あるいは同じ努力をしていても、結果に差がつくのはなぜか? そう考えると、才能の存在を重視せざるを得ません。

 スポーツや芸術の世界が典型でしょうが、基本的にはどんな仕事にも、またどんな職種にも当てはまると思います。営業一つとってもそうでしょう。この人には天性の才能があるんだろうなと思わせる人はいるものです。

 その一方で、だいたいのことは努力に比例するように思われます。先ほどのスポーツや芸術でさえそうですが、仕事で求められるスキルに関していえば、ほぼ努力次第だと言っても過言ではありません。つまり経験がものをいうのです。努力の結果、驚くべき成長を遂げる人もいます。そもそもそうでないとキャリアを積む意味がありません。

 さて、どちらが正しいのか? 実はこの究極の論争には、長い歴史があります。17世紀フランスの哲学者ルネ・デカルトに端を発する大陸合理論と、17世紀英国の哲学者ジョン・ロックが大成したといわれる英国経験論の対立がそれです。

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