人の営みの中で生まれた悩み。数千年前、哲学者たちも同じことを悩んできました。毎回、現代人の悩みごとを2人の哲学者の視点で切り取ります。モヤッとしていた悩みの解決策は、哲学に答えがあるはずです。

 理性と感情。これは人間に備わった2つの対照的な能力としてよく挙げられるものです。理性とは冷静に考えることのできる力、感情とは心の底から自然に込み上げてくるものといっていいでしょう。

 どちらも人間に備わった能力であることには違いありませんが、理性が力と称されるのに対して、感情を力と呼ばないのはなぜでしょう。恐らく、自身でコントロールできないからではないかと思います。

 確かに喜びも悲しみも、そして怒りも、あくまで自然に込み上げてくるものにほかなりません。うれしくもないのに喜んだり、悲しくもないのに悲しんだり、腹も立たないのに怒ったりすることは、普通は考えられません。

 だから困るのです。とりわけ怒りという感情に関しては、それがあまりに大きなものになると、他者に危害を加えることにもなりかねません。自分自身に対する怒りであっても、やはり自分を傷つけることがあります。

次ページ セネカ「怒りは最も遠ざけなければならないものだ」