中学受験。小学生の学習範囲を超えた内容や、深い思考力を問われることが多く、小学校の勉強だけでは対応が難しい。そのため塾通いは必須とされているが、最近の受験熱の高まりから、「中学受験塾」への入塾をめぐる競争も激化している。今回はこうした、塾通いの現状をお伝えしていく。

受験準備の塾でも戦争が起きる

 熾烈な中学受験と塾の実態をリアルに描き、ドラマ化もされている『二月の勝者-絶対合格の教室-』が話題だ。中学受験を描いた作品がメディアで大きく取り上げられるのは、中卒の両親が娘の超難関校合格を目指すブログが注目され、書籍化されたノンフィクション『下剋上受験』(2014年に書籍化、2017年にドラマ化)以来のこと。東京オリンピックや新型コロナウイルス感染症など、社会の大きな変化を経て、以前に増して中学受験への関心が高まっているように感じる。

日本テレビ系 土曜ドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」(毎週土曜午後10時~放送) 12月4日(土) には第8話が放送される予定。受験戦争中の親だけでなく、今後受験を視野に入れる親もチェックしておいてしかるべきだ
日本テレビ系 土曜ドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」(毎週土曜午後10時~放送) 12月4日(土) には第8話が放送される予定。受験戦争中の親だけでなく、今後受験を視野に入れる親もチェックしておいてしかるべきだ

 中学受験熱の高まりは、実際のデータからも見て取れる。2021年、首都圏で私立・国立中学校入試に挑んだ受験者数は推定で5万1400 人。全小学6年生に占める受験者の割合を示す受験率は年々上昇しており、17.26% と過去最高だった20年を更新した。公立中高一貫校の受検者を含めると受験率は20%を上回るとされる。つまり、5人に1人が中学受験する状況が続いているのだ。(※栄光ゼミナール『2022年入試用中学入試データブック』から)

 こうした状況の中、中学受験塾の入塾にさまざまな変化が起きている。とくに、御三家(開成中学校・麻布中学校・武蔵高等学校中学校)などの名門校への合格者を多く輩出する❝名門中学受験塾❞の入塾をめぐる競争が激化しているのだ。

 中学受験をする小学生が入塾する時期は、小3の2月が多いといわれる。なぜ2月かといえば、東京都内の中学入試の日程は2月上旬に集中しているからであり、そこに照準を合わせて、大手塾の新学年は2月に設定されている。しかし、人気の校舎では、2月スタートの新小4クラスにいざ入塾しようとすると、下の学年から持ち上がりの生徒も多く、入塾自体が狭き門になっているのだ。

 自由が丘や吉祥寺といった中学受験生が多く集まるエリアには、大手中学受験塾の中でも基幹校と呼ばれる大規模な校舎があるのだが、ここの人気は特に高い。狙いを定めた塾に小3の冬期講習から参加させる親。中には小1から通わせることを選択する家庭も少なくない。

 当たり前だが、小1から受験クラスに通うことは家計に大きな負担を与える。小4からのクラスと比較すれば日数も少なく安価ではあるが、計6年間と3年間となるとそれだけ長い期間、塾にお金を支払う必要がある。子どもの立場から見ても、時間的な拘束や中学受験へのマラソンの長期化を強いることに。家計面やモチベーション面で、中学受験は途中で息切れしないことが大切だ。(余談ではあるが、難関中学校受験を対象にした学習塾「SAPIX」では小学校入学前の2~3月「もうすぐ1ねんせい」といった体験教室も開設している。場合によっては小学校入学前に中学受験の火蓋が切られているのかもしれない)

 ところで、なぜ先手を打ってまで「小4から」中学受験塾の学習をスタートしなければならないのか。その理由は塾のカリキュラムにある。とくに大手塾の場合、塾のカリキュラムに合わせ、クラスごとに複数の生徒たちが同時に受験勉強を進めていくことになる。小4からスタートして、小6には学校別の受験対策や過去問演習などの総仕上げをする。そうなると、「小6から受験勉強をしたい」という生徒が加わることは極めて難しい。

 大手塾の中にも小規模校があり、そうした塾であれば、入塾競争がさほど厳しくなく、比較的柔軟に入塾できるケースもある。しかしそれでも小6からの入塾はやはり厳しく、「個別指導でしか対応できない」と言われるケースがほとんどのようだ。

 塾選びも難しい。

 例えば、ある家庭では、長男が通っていたのと同じ大規模な校舎に次男も通わせようとしたところ、次男は雰囲気に圧倒されてしまったため、同じ塾の小規模な校舎に移ったというケースもある。同じ塾であっても校舎によって「校風」は全く異なり、タイプによる合う・合わないがあるのだ。

 大規模な校舎の方は「合格実績が高い」「人数が多くたくさんの受験データを持っている」ことなどから有利に見えることもある。しかし、広く展開している大手塾であれば、その校舎単体ではなく、塾全体でノウハウや情報を共有しているはずだ。その校舎単体の合格実績よりも、どのような先生が教えてくれるのか、どんな雰囲気の校舎なのかという点に着目してほしい。

次ページ 塾が家庭に与える影響