中学入試生と高校入試生のギャップ

 豊島岡女子は授業改革も行っています。中学や高校の新しい学習指導要領が出そろう今年度は、多くの学校で新しい取り組みや学び方をスタートさせるところが多く、同校も例外ではありません。これまでのコツコツと積み上げるタイプの教育に加え、探究的な活動を授業に取り入れてきました。

 探究活動とは、教科学習を踏まえ、生徒自身が身の回りに起きる疑問や問題を自ら発見し、解決を図る道を資料などを集めて整理し、考える活動です。また、学んだことを発表することも組み込まれています。パネル展示をする学校や、論文にまとめる学校など、それぞれにやり方は違いますが、高い指導力が教員に求められる内容です。

 探究的な活動を行うには時間と労力が必要です。労力とは、教師側の教える力量もさることながら、生徒側も単純に答えが出ないこの活動に向き合う必要があります。この活動は生徒の興味関心を引き出す効果もあるため、単純学習と比較して生徒の学びを深める利点も存在します。ですが、グループワークも多くなるため、仲間と話し合う時間もたくさん必要になるのです。

豊島岡女子学園エントランス (画像:豊島岡女子学園)
豊島岡女子学園エントランス (画像:豊島岡女子学園)

 同校の高校は1学年8クラスあり、うち2クラスが高校入試で入った生徒で構成されていました。内部進学と高校入学では中学で学習した内容に差が生まれてしまうため、組を分けていたのです。

 探究的な活動では、データを使った分析も行うため、Excelを使う作業が発生します。中学から入学した生徒はIT(情報技術)リテラシーを高める授業を既に受けています。一方、高校入学の生徒の場合、例えばExcelの習熟度はまちまちで、探究学習に入る前に使い方講座などに時間を要することが分かっていました。

 こうしたギャップは探究学習に限った話ではありません。教科学習においても高校入学の時点で差が生まれています。公立中と豊島岡女子では、そもそもの授業時間数が異なり、英語の授業時間数を見ると、公立に比べて1.5倍以上あります。コマ数が多いということは、当然ながら学習量が増えるので、中学の段階で高校の学習範囲を先取りして学ぶことができます。より効果的に学習を進めるために完全中高一貫化に踏み切ったというわけです。

 豊島岡女子に限らず、公立中高一貫校が完全中高一貫化する大きな理由の一つが、このギャップにあるといわれています。

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