50歳から投資を始めようとしたとき、まずは口座開設し全額投資しよう!と意気込んでしまうもの。しかし投資には最低限押さえておくべきルールが存在します。前編「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」では、元機関投資家の視点で資産運用にかかる手数料の重要性を解説しました。後編では、より実践的な内容について紹介します。

投資をルール化する

 機関投資家にとっては、顧客の資産が投資の原資にあたるため、どういった投資をするかには説明責任が生じます。投資成績がどうであろうとも、「なぜその資産(銘柄)なのか」「なぜこのタイミングなのか」など、自らがとった投資行動の根拠を用意しておく必要があります。そのため、社内で議論を尽くすだけでなく、取引証跡や判断根拠資料を保存し、説明責任を果たすための手間と時間を惜しみません。

 一方で、個人の投資では、家計や自分の資産を運用に回すことになるため、第三者に対する説明責任を負うことはありません。誰にも相談せず、行き当たりばったりで投資をする「何となく投資」を始める傾向にあります。耳が痛い話かもしれませんが、投資家は往々にして自らの能力を過信しがち。自らの感覚やひらめきに頼って投資をしてしまう方が非常に多いのです。

 十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします。事前に何らかの投資制約を課すことで、向こう見ずなギャンブルを避けることができるからです。

運用ガイドラインを設定する

 機関投資家は、新たな運用戦略を立ち上げる際に「運用ガイドライン」を設定します。ここでいうガイドラインとは、常に順守を求められる「ルール」。あらかじめガイドラインを設定し、新たな投資をするときだけではなく、日々のモニタリングを含め、あらゆる状況下において、そのルールを順守することが求められます。また、運用ガイドラインは1年ごとなど定期的に見直し、環境や状況の変化に応じて内容を修正します。

 運用ガイドラインを設定する目的は、意図しないリスクを負わないためです。このガイドラインの中で、運用の目的や収益目標、自分の組織のリスク許容度に基づいて投資可能資産や資産アロケーション(割り当て)の範囲などを事前に決めます。そうすることで、過度なリスクテイクを抑制し、自らの能力を過信した衝動的な投資を未然に防ぐことができるからです。

 こうした運用ガイドラインの設定は、個人投資家こそ実践すべきです。具体的には以下の通りです。