ヘッジすべきか、ヘッジせざるべきか
実は、これは非常に難しい問いでもある。保険会社であれば、為替レートを固定化することで規制上のリスク量を減らすことができるため、一般的に為替ヘッジによる外貨投資が好まれています。しかし、しつこいようですが、資産運用に「フリーランチ」はないのです。為替ヘッジによってリスクを低減するためには、少なからずコストがかかります。
ヘッジコストはその手法によって大きく異なり、計算式も複雑になります。難しい話を割愛すると、ヘッジコストは2通貨の金利差によって決定されます。米ドル円に対するヘッジ取引では、為替水準を固定化したい通貨(米ドル)の金利を支払いつつ、自通貨(日本円)の金利を受け取ります。つまり、恒常的に金利が低い日本円は、ヘッジのために他の通貨に対してより多くのコストを支払う必要があるのです。このコストも決して低くはありません。通貨や金利水準にもよりますが、米ドルであれば年間1.0~3.0%程度要してしまうと考えてください。
そして、単年だけでなく、投資資産に為替ヘッジを付けて、長期保有をした場合の累積コストも考えてみてください。連載1回目でお話した通り、コストの累積効果により、単年では数%だったとしても長期では著しいコスト負担になるのです。
過去20年間(2000~20年)における米ドル円の動向から見てみましょう(図)。20年間における米ドル円の最高値(円安)から最低値(円高)への下落率は-44%でした(日次終値ベース)。一方、年間5%のリターンを稼ぎつつ年3%のヘッジコストを負担した場合の累積ヘッジコストは-47%にまで膨れ上がります。このケーススタディーでは為替を最悪のタイミングで取得(ドル高・円安)し、最悪のタイミングで売却(ドル安・円高)すると想定していますが、それでも為替ヘッジなしのマイナス幅が小さいことが分かります。簡単な試算による比較ではありますが、将来耐えうる為替損失と予測されるコスト負担を比較し、為替ヘッジの有無を検討するのもよいでしょう。
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