高金利は高リスクを意味する

 では、インフレ率が高いと為替にはどういった影響が生じるのでしょうか? 答えは、「通貨価値の低下」です。インフレ率が高いほど、通貨の価値が低下し、為替レートは悪化します。このメカニズムを単純化して解説します。

 01年、とある商品が100円で買えたとします。1年後の02年、まったく同じ商品が110円にまで値上がりしました。この場合、インフレ率は10%です。インフレによって商品価値は高まりましたが、通貨の価値はどうなったでしょうか? かつて100円で買えた商品が、100円では買えなくなったのです。つまり、同じ商品を購入するためには、より多くのお金を支払う必要があります。これは「通貨の価値が下がった」と言い換えることができます。

 「為替は通貨間での綱引き」とお伝えしました。インフレの為替水準への影響を検討してみましょう(図)。先ほど使用した例とまったく同じ商品を米ドルでも購入できるとしましょう。01年、100円で購入できる商品が、1ドルで購入できたとします。商品の価格は、通貨の価値を示す尺度とも考えられるため、この場合の通貨交換レートは、1ドル=100円となります。02年、インフレによって同じ商品を購入するために、日本円では110円支払う必要がある一方、米国では物価の上昇が起きませんでした。そのため、引き続き同じ商品を1ドルで購入できます。

 結果、商品価値から考える通貨交換レートは1ドル=110円になります。1ドルを交換するために支払うべき円は、100円から110円に増加しており、円の価値が相対的に低下したことが分かります。

(図)インフレと為替水準の関係性
(図)インフレと為替水準の関係性
出所:著者
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 高金利通貨の話に戻ります。上述の通り、高い金利は高い政策金利を、高い政策金利は高いインフレ率を示唆します。そして、高いインフレ率は、通貨の価値を低下させるリスクが高いことを示しています。つまり、高金利通貨は、日本円などの低金利通貨に比べて、価値が低下しやすいのです。高い金利収入の獲得を目指していたとしても、大幅な為替差損を被る危険性があります。長期で見れば、政策金利や短期金利からインフレ率を引いた「実質金利」が通貨の価値を決めることが多いのですが、今回は話を単純化して説明しました。

 必ずしも、高金利通貨と関連するわけではないのですが、高金利を提供する国の政治・経済は不安定である場合が多いのです。国内経済のコモディティー輸出への過度な依存が見られたり、たびたびハイパーインフレに苦しんでいたり、クーデターが頻発していたり、金融政策が唐突かつ頻繁に変更されたり、不安定性の種類と深度はさまざまです。こうした問題が顕在化するたびに為替が暴落するケースが非常に多いので、高金利通貨への投資を検討する際は、「インフレ率」に加えて、「政治・経済情勢」も確認することをお勧めします。

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