50歳からの外貨建て投資で注意すべきこと
外国通貨建て資産への投資は、ご自身の資産運用に分散効果をもたらし、投資収支を改善させることが期待できます。しかし、「資産形成期」と「資産切り崩し期」が混在する50歳からの資産運用では注意も必要です。
外国通貨建ての投資の収支には、国内資産が有する「金利(配当)収入」と「値上がり益(値下がり損)」に加え、外国通貨が持つ「為替差損益」が加算されます。外貨投資は単純に投資収支の変動要因が増えることになるため、安定的な収入を得るための戦略には適さない場合もあります。「投資からの収入をブレさせたくない」と考える個人投資家の方にとっては、為替変動がストレスとなるでしょう。大幅な円高となり外貨資産価値が下落した場合、外貨資産を切り崩して支出しなければならないとしたら、「円安(外貨高)タイミングを待つ」という選択肢も取りにくくなります。外貨投資への金額を制限したり、消費支出に回す資金は円資産からの収入に限定したりするなどの工夫が必要となります。
日本の金利が著しく低い環境下では、投資家は皆高い金利を追い求めて、さまざまな資産への投資を検討します。こうした当てなき探求は、ややリスク性の高い資産への投資を開始することで落ち着けばよいのですが、「高金利通貨」に行き着いてしまう個人投資家の方は少なくありません。ブラジル・レアル、南アフリカ・ランド、トルコ・リラ、そしておなじみオーストラリア・ドル。これらは高金利を提供するとして個人投資家からの人気が根強い通貨です。
「高金利なので魅力的ですよ」というのはよく聞く営業トークです。しかし、金利が高いからといって、高いパフォーマンスをもたらすわけではありません。この点は前回の「債券投資」の回でも解説しました。繰り返しになりますが、資産運用の世界に「フリーランチ」は存在しないのです。金利が高いのには、相応の理由が必ず存在します。
鍵の一つが「インフレ率」です。一部例外はありますが、各国の金融政策をつかさどる中央銀行に課される使命の一つが「物価の安定」です。安定的な物価は良好な雇用環境と密接に関わっています。そのため、政策金利と呼ばれる預金金利を含む全ての基準となる金利を上下させることで、インフレ率をコントロールします。インフレ率が高い場合は、政策金利を引き上げ、インフレ率が低い場合は、政策金利を引き下げることで調整することが金融政策のセオリーです。
つまり、通貨の金利(債券金利や預金金利など)が高い場合は、その国のインフレ率が高いことを示しています。事実、高金利通貨の国のインフレ率は高く、ブラジルの場合は前年比10.7%(21年11月時点)、トルコにいたっては同36%(21年12月時点)もの高インフレ状態にあります。結果、ブラジルの政策金利は、9.25%(21年12月時点)、トルコにいたっては14%(21年12月時点)もの高金利です。こうした金利水準だけを見たら「ぜひぜひ投資したい」と思ってしまうのも当然でしょう。
Powered by リゾーム?