為替の予想は当たらない
まず、外貨投資の目的である「為替差益」について。米ドルを保有することを想定すると、日本円の価値に対して米ドルの価値が高まる(ドル高・円安)ことで為替差益を獲得することができます。つまり、米ドルの対円での値動きを予想して米ドルを保有することになります。
「日本円に対して米ドルが上昇すればよい」。話としては非常に分かりやすいのですが、実のところ為替がどっちに動くのかについては、誰にも分かりません。株式指数を考えるのであれば、ざっくり各国の潜在成長率程度に伸び続けるとイメージできます。経済がグローバル化していることを考えると、世界の潜在成長率をある程度加味してもよいかもしれません。中国などの経済成長が著しい国や米国などの安定的に成長を続ける先進国の株価は、「経済成長が期待できる限り株価も上昇を続ける」と短絡的ながらも解釈することができます。
一方、為替についてはどうでしょう? 為替を動かす主な要因は短期金利にインフレ期待を加味した「実質金利」や、モノやサービスの貿易や投資に絡む国へのお金の流れである「実需」などさまざまです。さまざまな要因の存在を考える上で、忘れてはならないことが「為替は通貨間の綱引きである」という点です。米ドル円の為替水準であれば、米ドルと日本円を動かす要素の綱引き、英ポンド円であれば、英ポンドと日本円の綱引きなのです。為替を動かす要素が多岐にわたり、そしてそれらの要素を持つ2つの通貨間での綱引きと分かれば、為替市場を読むことは至難の業ということは納得できるはずです。その上、政治的な要素や規制動向、金融政策も絡むため、為替市場は複雑怪奇な市場なのです。
そのため、為替の見通しなど「当たらない」ものと考えてください。元来、エコノミストやストラテジストの経済や株価の見通しなどは当たらないものなのですが、為替水準の当たらなさは顕著です。著名な通貨ストラテジストの方々が通貨の方向性を予測し公表していますが、為替の水準だけでなく、上がるか下がるかといった方向性ですら当てることは困難です。こんなに予測することの難しい資産の方向性と水準を予測して、為替差益を狙う取引は果たして「投資」と呼べるのでしょうか?
では、「外国通貨を持つべきではないのか」というと、決してそうではありません。日本に住み、日本で営業する会社から給料をもらい、日本の資産を購入するといった生活は、「日本経済」に対するリスクを持ちすぎることになります。外国資産を保有する、つまり日本以外の国に対するリスクを持つことで、資産のリスクを分散させることができます。
一方で、外貨預金などで外国通貨をそのまま保有している投資家は意外と多いことに驚かされます。単純に、非常にもったいないのです。外国通貨は、通貨として保有するのではなく、外国資産の投資に回すことでより高い収益率を期待できます。金利収入を得たいのであれば、まったく金利収入を得られない円債への投資よりも、外貨を使って外国債券を購入し、償還日まで持ち切ったほうがより高い金利を獲得できます。また、値上がり益と配当収入を狙って外国株式に投資をすることも選択肢の一つです。外貨投資を企図することで資産運用の選択肢が格段に広がるのです。
Powered by リゾーム?