難関私立大学の2021年入試で、大量の繰り上げ合格が出たことをご存じだろうか。繰り上げ合格は合格発表の際に補欠合格者を発表する場合と、不合格だった受験生に追加合格を出す場合がある。受験生にとっては良いことのように思われるが、追加合格が3月末に受験生に伝えられることで混乱が生じる場合もある。この異常な状態を生み出したのは、「コロナ禍」と「国の政策」が原因だ。難関大学で繰り上げ合格が急増した背景と、22年入試での見通しを探った。
難関私立大学で、3月末になって繰り上げ合格者が大量に出ていることが、21年入試終盤に話題になった。早稲田大、慶応義塾大、上智大のいわゆる「早慶上智」のほか、「MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)」、関西の「関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)」でも繰り上げ合格を前年よりも増やす動きが目に付いた。その実態を、大学入試に関する研究や情報提供を行っている大学通信(東京・千代田)が調査した。次の表を見ていただきたい。

同志社大の繰り上げ合格は共通テスト利用除く
早稲田大では、前年よりも565人多い1580人に繰り上げ合格を出した。慶応義塾大では、前年より640人多い1283人を合格に繰り上げた。どちらの大学も合格者の1割強が、繰り上げ合格ということになる。
さらに、上智大の数字を見ると、その割合の高さに驚く。繰り上げ合格者は前年よりも1275人多い3025人。全体の合格者6776人の半分近くを占めているのだ。立教大や法政大も、前年よりも多い繰り上げ合格者を出した。
その一方で、表にはないが東洋大、近畿大、駒沢大などは、前年よりも大幅に繰り上げ合格者を減らしている。ただ、どの大学も全体の合格者数は前年よりも増えている。難関大学に繰り上げ合格者が出るのを見越していたのかもしれない。
繰り上げ合格判明が3月末の場合も
繰り上げ合格は、受験生にとってはもちろん悪い話ではない。その方法は大きく2つに分けられる。1つは合格発表時に補欠合格者として通知した上で、定員に空きが出れば合格通知を出す方法。もう1つは合格発表時には不合格だったものの、後から追加合格の通知を出す方法だ。
補欠合格者になっていれば、受験生も一縷(いちる)の望みをかけて通知を待つ。補欠で合格が回ってくる順位が分かる大学も多いことから、心の準備も、いざというときのための備えもできる。
一方で、補欠合格ではなく、追加合格の場合、混乱が生じることがある。受験生が他の大学への進学を決めていた場合、すでに払い終わった入学金は戻ってこない。特に3月末に追加合格の連絡を受けると、こんなケースも考えられる。
2月に第3志望の大学に合格して進学を決めていたが、3月中旬に第2志望の大学から繰り上げ合格の通知が来たことで、進学先を変更し、こちらに入学金を支払う。ところが、入学式を直前に控えた3月末になって、第1志望の大学から追加合格の連絡が来た。受験生としては第1志望の大学に行きたい。そうなると、第2志望、第3志望の大学に払った入学金は無駄になり、保護者としては手放しで喜べなくなる。
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