「海外への進学には多額の学費が必要ですが、奨学金という方策があることを生徒も認識しています。進学先の大学から奨学金を受給する生徒もいれば、海外進学者向けの奨学金を用意している日本国内の財団などに応募して、金銭的な支援をいただく生徒もいます」
インターナショナルコースの教室の廊下には米国の地図が掲示され、その上に大学名と、卒業生が実際に提示を受けた奨学金の金額を書いたメモが貼られている。


21年に海外の大学を目指した生徒が多くの海外の大学を併願し、合格していることについては2つの背景が考えられる。ひとつはコロナ禍で寮に入居できる人数が限られ、留学生の合格者が削られる懸念があったことから、生徒が併願先を増やしたこと。もうひとつは複数の大学に合格すれば、より多くの奨学金を引き出す交渉ができると考えたことだ。
奨学金交渉のストーリーも生徒自身で考える
「第1志望で合格した大学の奨学金が200万円で、第2志望の大学が350万円だった場合、第1志望の大学に対して、第2志望の大学と同じ水準まで金額を上げてほしいという交渉もできます。もちろん、交渉するためのストーリーも生徒自身が考えます。中には学費を全額免除する大学もあります。いろいろな手段があると知れば、学費の高さが海外の大学に進学できない理由にはならないことが分かります。このハードルを生徒が自分たちの力で解消していくことにも力を入れてきました」(植松統括長)
広尾学園から海外を目指す生徒の多くは、美術や音楽などの芸術、映画などの映像制作、それに哲学や経済など、自分が希望する学びができる大学に進学している。インターナショナルコースには今年、3年生が40人、2年生が50人在籍している。21年の卒業生に比べると人数は少ないものの、生徒の海外志向は強まっているという。
広尾学園の進学結果から見えるのは、海外の大学はもはや夢の進学先ではなく、高校生にとって選択肢のひとつになりつつあることだ。コロナ禍とは関係なく、この傾向は今後も広がっていくのではないだろうか。
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