コロナ禍の学生支援策として受験料を無料にした大学がある。千葉工業大学は、2021年入試で大学入学共通テストを利用した入試の検定料(受験料)1万5000円を免除した。その結果、首都圏の多くの私立大学が志願者を減らす中で、前年より5000人以上志願者が増加。志願者数は全国2位に急伸した。共通テスト利用入試の受験料免除は22年入試でも続けるという。全国的にも注目され、追随する大学も出ているこの施策について、千葉工業大学に聞いた。

志願者数全国2位に躍進

 「今年度も新型コロナウイルス禍による景気への影響が続く中、受験生支援として、大学入学共通テスト利用入学試験の受験料(15,000円)を免除します」

 2022年入試でこのように打ち出しているのは、千葉県習志野市などにキャンパスがある千葉工業大学。工学部、創造工学部、先進工学部、情報科学部、社会システム科学部の5つの学部を擁し、1・2年生は新習志野キャンパス、3・4年生と大学院生は津田沼キャンパスで学ぶ。創立は1942年で、日本の私立の工業大学では最古の歴史を持つ。私立の単科大学では毎年最も志願者を集める大学だ。

日本の私立の工業大学では最古の歴史を持つ千葉工業大学
日本の私立の工業大学では最古の歴史を持つ千葉工業大学

 共通テスト利用入試の受験料免除は、21年入試で初めて実施された。この連載の初回「『狙い目』大学はどこだ? 21年の結果でみるコロナ禍入試戦略」で指摘したように、21年入試で首都圏の私立大学は新型コロナウイルス感染症の影響によって軒並み志願者を減らした。その中で千葉工大は、逆に志願者を大きく増やした。

 21年の一般選抜試験は、A日程・B日程・C日程と共通テスト利用入試の前期・中期・後期日程の6回。A・B・C日程の志願者は、ほとんどの学部で前年比80%台後半から90%台と減少した。これに対し、共通テスト利用入試は、前年比120%台後半から、学部によっては180%台にまで増加した。

 共通テスト利用入試自体は、以前から実施していて、例年多くの志願者を集めていた。それが受験料免除によってさらに増える結果となった。

 具体的な志願者数を見てみると、前期日程は募集人員が413人に対して、志願者は4万5537人。前年より1万359人増加した。中期日程は、募集人員104人に対し、志願者が5892人で2191人増加。募集人員が50人と少ない後期日程の志願者は2819人で、こちらは前年よりも301人減少している。

 全体の志願者数は10万8707人に及び、前年よりも5438人増加した。大学別ランキングでは前年の6位から2位に上昇。10位以内で唯一志願者を増やした。21年入試で10万人を超えたのは、1位の近畿大学と千葉工大だけだった。

「いつもより学力の高い学生が入学した」

 しかし、共通テスト利用入試でこれだけ多くの受験生を集めても、受験料が無料であれば大学の収入にはならない。千葉工大はなぜそんな決定に踏み切ったのだろうか。

 21年入試で受験料免除を発表したのは、20年10月14日だった。次のようなリリースを出している。

 「新型コロナウイルス禍による景気への影響はなお続いており、大学進学に関わるご家庭の経済的負担は大きくなっております。さらに今年度は大学入試改革が実施されたこともあり、『自分の進学より保護者にこれ以上の負担をかけたくない』と悩んでおられる受験生も少なくないでしょう。

(中略)

大学入学共通テストは、自分の居住地域で受験できるので、共通テストのみで合否判定する共通テスト利用入学試験を受験すれば、受験のために長距離を移動せずにすみ、新型コロナウイルス感染リスクを大幅に軽減することができます。また、交通費や宿泊費など、受験に伴う出費も大幅に削減できます。本学は今年度に限り、検定料を免除しますので、受験生は、受験の選択の幅を大きく広げることができると考えております」

 決断の背景を入試広報部の日下部聡部長は次のように説明する。

 「当時はコロナ禍で本当に入試が実施できるのか分からない状態でした。ただ、萩生田文部科学大臣が、共通テストに関しては地元で受験できることもあり、厳格な感染予防を講じた上で実施する方針を出していたので、最悪、入試ができなくなった場合でも共通テスト利用入試によって学生が確保できると考えて、無料化を実施しました」

 無料化によって共通テスト利用入試の志願者は、前述の通り前期・中期の各学部で大幅に増えたが、ここまで増えるとは予想していなかったという。

続きを読む 2/2 入試改革で年々志願者を増やす

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