個別に見ていくと、志願者数が最も多かったのは千葉大学の1万1565人。前年よりも1353人増加した。後期試験の志願者が多く、志願者数トップは2年連続だ。千葉大学が志願者を集めるのは、文系・理系の学部から医学部まで持つ国立の総合大学であることが大きい。南関東では、医学部までそろった国立の総合大学は、東京大学と千葉大学くらいしかない。2番目は神戸大学の1万236人。募集人員が2960人と全国最大の東京大学が、9089人で3番目だった。
国立大学の中には、新型コロナの影響が志願者増に働いた大学もある。千葉大学以外に志願者を増やした大学を順に挙げると、山口大学が前年比1045人増、神戸大学が921人増、茨城大学が652人増、九州大学が388人増と、地方の大学が目立つ。大学通信の安田賢治常務は、コロナ禍で地方の受験生の地元志向が高まっていると分析する。
「コロナ禍で感染者の多い都市部に進学するよりも、地元の大学に進学したいと考える受験生は多いようです。感染への心配や経済的な側面から、保護者も同様の考えを持っていて、結果的に国立大学の人気が高まったと言えそうです」
コロナ禍が続くとすれば、22年も地方の国立大学で倍率が高くなる傾向は続きそうだ。競争激化が予想されるが、国立大学には「狙い目もある」とも安田常務は指摘する。それは、東京都内の大学だ。
「都内の国立大学は、21年入試の志願者数が東京大学は横ばい、一橋大学は微増だった一方で、東京工業大学、お茶の水女子大学、電気通信大学は減少しました。これらの大学は地方からの受験生が一定程度いましたが、コロナ禍で減少している可能性があります。比較的狙い目といってもいいのではないでしょうか」
お茶の水女子大学や電気通信大学は、首都圏の進学校に通う生徒が受験する場合、私立の早稲田大学や慶応義塾大学、東京理科大学と併願しているケースも多く、両方合格すれば私立に流れる傾向にあるという。コロナ禍で地方からの受験生の減少も続く可能性があり、第一志望であれば狙い目だ。
また、公立大学は、22年入試で大きなトピックスがある。それは、大阪市立大学と大阪府立大学の合併によって、大阪公立大学が開設されること。1学年の学部定員は2800人余りで、公立大学では全国最大、国公立大学でも全国3位の規模を誇る。初めての入試で大阪公立大学が受験生をどれだけ集めるのかによって、関西のほかの国公立大学に影響を与えそうだ。
志願者大幅減の国際系学部は狙い目
大学による傾向の次に、学部による違いを見てみよう。
国公立や私立に関係なく、21年入試で大幅に志願者を減らしたのが国際系学部だ。ここ数年は人気が高かった分野だが、コロナ禍で状況が大きく変わった。現在国際系学部に通っている大学生の多くは、コロナ禍で海外留学の取りやめなどを余儀なくされ、気の毒な状況に置かれている。
影響は21年入試に表れ、各大学とも国際系学部の志願者数は落ち込んだ。国公立大学では東京外国語大学が前年比612人減。倍率は前年の4.9倍から4.0倍まで下がった。定員が100人の秋田県の公立大学である国際教養大学も、志願者を150人程度減らした。倍率は、定員55人のA日程が前年の7.9倍から6.4倍に、定員40人のB日程が14.5倍から13.0倍に、定員5人のC日程が49.0倍から47.0倍となっている。
Powered by リゾーム?