早稲田大学の場合は特に、一般入試で大学入学共通テストを導入した3つの学部が志願者を大幅に減らした。政治経済学部が28%、国際教養学部が37%、スポーツ科学部が48%と減少率は高い。いずれの学部も、共通テストを受験した上で大学の独自試験を課す国立大学と同じ形式に入試を改革した結果、受験生が敬遠したとみられる。政治経済学部では、共通テストの数学を必修にしたことも、私立大学専願の受験生が避ける要因になった。

 慶応義塾大学も全体の志願者数を減らした。前年よりも4.6%減少し、3万6681人だった。早稲田大学に比べれば減少率は大きくないものの、志願者数自体は平成と令和を通じて最低だった。

 特に落ち込みが激しかったのが青山学院大学だ。早稲田大学と同様に、大学入学共通テストと独自試験である論述・総合問題を課す改革をした個別学部日程が、大幅に志願者を減らした。全ての学部で同日に同一試験を行う全学部日程では志願者が増加したものの、全学部合計では30.6%と大幅減だった。

 入試改革をしたこのほかの大学では、上智大学も共通テストと独自試験を組み合わせた方式で志願者を減らしている。大学入試改革に合わせて、共通テストを取り入れて国立型の入試に改革した大学や学部が、志願者という観点では裏目に出た形だ。ただし、質の高い学生を確保できた可能性はある。

 一方、入試改革を実施し、志願者を増やしたのが立教大学だ。要因の一つは、英語の独自試験を廃止し、民間試験か共通テストのいずれか高得点の方を合格判定に採用したこと。受験生にとっては英語の個別試験の対策をする必要がなく、負担が軽くなる。

立教大学は受験生の負担軽減につながる入試改革で志願者を増やした(写真:PIXTA)
立教大学は受験生の負担軽減につながる入試改革で志願者を増やした(写真:PIXTA)

 もう一つの要因は、同じ学部を複数回受験できる、全学部日程方式を導入したことだ。文学部は最大6回、ほかのほとんどの学部は5回受験することが可能になった。その結果、前年よりも志願者は4167人増え、首都圏の総合大学では一人勝ちの状態となった。従来よりも受験しやすい環境を整えた点が、同じく改革をしながら大きく志願者を減らした青山学院大学などとの違いだろう。

 このほか21年入試で志願者を増やすか、減少幅を抑えた大学には、出願の時期に「4月から原則対面授業」を打ち出した大学が多い。首都圏では上智大学と明治大学、関西圏では龍谷大学や関西学院大学などだ。現在、対面授業の重視を打ち出している大学はほかにもあるが、実際には緊急事態宣言下では対面授業はほとんどできていない大学も多い。結局はコロナの感染やワクチン接種の状況次第ではあるが、対面授業は受験生が大学選びで重視するポイントになっているようだ。

 以上の点から、浪人生と地方からの受験生が減少する中で、入試改革によって受験しやすくなったかどうかと、対面授業の実施を打ち出したかどうかが、私立大学における受験生の奪い合いを左右したと言える。

 入試改革は21年で一段落したこともあり、22年入試ではほとんどの私立大学で大きな入試改革は予定されていない。ただし、コロナ禍が続いていることを考えると、22年も首都圏、関西圏の私立大学では志願者数が21年と同様の傾向になる可能性が高い。本連載の別の回でも紹介する予定だが、21年入試では首都圏の私立大学が多くの追加合格を出している。難関私立大学を志望する受験生は、積極的に挑戦した方がチャンスが広がるとの見方もできそうだ。

国立大学は地方で倍率上昇、狙い目は東京?

 次に国立大学の動向を見てみたい。21年は全体の募集人員7万6917人に対し、志願者数は29万5931人。倍率は3.8倍だった。前年に比べて志願者数は1万1261人減少し、前年比3.7%減。私立大学に比べると減少幅は小さかった。コロナ禍で地元志向が強まったことと、学費の安さで国立大学を選ぶ受験生が多い傾向にあったことで、下げ止まった可能性がある。

次ページ 志願者大幅減の国際系学部は狙い目