「なんでもやる」からの転換には困難が伴う

 いつの世も、金融政策の転換には困難が伴う。体系だった金融政策のオプションがない江戸時代ではなおさらだろう。現代に目を向けてみても同様だ。2021年6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、金融引き締めが早期に開始される可能性が示されると、米国をはじめとする主要な金融市場は混乱した。長期国債金利は著しく低下し、これまで好調だった株価は下落に転じた。

 その後も、米国の雇用や物価関連の経済指標や、FRB(米連邦準備理事会)高官による発言、8月27日に開催されたジャクソンホールにおけるジェローム・パウエルFRB議長による講演などを受けて、株価や国債金利が上下動を繰り返すなど、金融市場のボラティリティー(価格の変動性)は高まっている。こうしたマーケットの混乱は、政策の手綱を締めるタイミングが難しいことを如実に示している。

 財政政策においても同様だ。コロナ禍での経済支援策として、日本や米国を含めた世界各国で大規模な財政出動が実施されている。こうした巨額な財政支出の資金を調達するために、各国は過去類を見ないペースで国債を発行している。危機を乗り切るために必要な支出である一方で、コロナ禍が過ぎ去った後の増税可能性を考えると、後ろ暗いというのが本音だ。だが、政府財政の好転のために、享保の改革よろしく緊縮財政が企図された場合、景気悪化とデフレ環境へ転落しないとも言い切れない。

 「なんでもやる」という言葉に裏打ちされた緊急的な金融・財政政策は、資産価格を押し上げ、実体経済の回復を後押しした。だが、コロナ禍が収束した後には経済の回復に伴って、いつかは政策の転換を迫られることになる。元禄バブルが我々に教えてくれた教訓は、政策転換のタイミングやその引き締めスピードを誤ると、深刻な経済危機に陥る可能性があるということだろう。

 さて、次回の記事では、20世紀前半の米国で生じた株価の大暴落を取り上げる。

■変更履歴
本文中にある「スタグフレーション」は「スタグネーション」の誤りでした。訂正いたします。[2021/9/27 16:10]
オンラインセミナー「日経ビジネスLIVE」のご案内

スモールビジネスから始まる「ネオ日本型経営」

<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは:</span>「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

■開催概要
日時:2021年9月28日(火)~29日(水)、キーノートを含む5セッション
講師:LIXIL瀬戸欣哉社長兼CEOほか著名経営者
プラチナパートナー:アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc.

詳細・申し込みはこちらをご覧ください


The Future of Management 2030
資本主義の再構築とイノベーション再興

■開催概要
日時:2021年10月5日(火)~7日(木)
講師:フィリップ・コトラー氏、リチャード・セイラー氏など世界の著名経済学者・経営学者が多数登壇

詳細・申し込みはこちらをご覧ください

この記事はシリーズ「大崎匠の温故知新「バブル史」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。