景気後退の一方で株価高騰の違和感

 2020年春先、金融市場は荒れに荒れた。米国の株式市場では、連日大幅な下落を記録し、取引時間中の急激な下落を緩和するために、サーキットブレーカー(売買を一時中断する措置)が幾度となく発動した。米国だけでなく、日本、欧州、英国、中国などの主な株式市場は急激な値動きを見せ、国際金融市場は混乱に陥った。

 ショックの主因は、言うまでもなく「新型コロナウイルス」のパンデミック(世界的大流行)。感染の広がりが全世界的な景気悪化懸念を急速に高め、投資家は株式資産の売却に走り、安全資産である金や債券に資金を投じた。まさに「コロナショック」と称するにふさわしい金融市場の混乱であった。

 2021年6月現在、引き続きコロナウイルスは世界中で人々の生活を脅かし続けている。欧米諸国ではワクチン接種が進み、経済活動の再開が徐々に始まっているものの、失業率が高止まりし、各国ともに大規模な財政出動に頼っている状況では、景気が回復したとは言い難い。日本も依然として3回目の緊急事態宣言が発令されており、短期間でコロナウイルスの脅威がなくなることはないだろう。

 このような厳しい環境と相反して株式市場は活況だ。日経平均株価は2月15日には、バブル最盛期の1990年以来の3万円の大台まで到達。米国では、史上最高値を更新し続け、S&P500指数では、4000ドルを大きく超える水準まで上昇している。NASDAQに至っては、コロナショック時の約2倍の水準の1万4000ドル台まで高騰した。

 パンデミックによる世界的な「景気後退」の一方で、「株価高騰」という相反する状態と現象は、「資産バブル」を想起させる。事実、資産バブルを指摘する投資家の声は次第に高まっている。「今の株式相場はバブルなのか?」。こうした疑問に対する答えは後の経済学者が判断するだろう。それ以上に知るべきことがある。「そもそも『バブル』とは何なのだろうか?」ということだ。

 その答えとして、賢人の言葉を参照したい。かつて、19年間もの長期にわたって米連邦準備理事会(FRB)議長の座に君臨していたアラン・グリーンスパン氏は、「根拠なき熱狂(Irrational exuberance)」がバブルをもたらすと表現した。エール大学教授であるロバート・シラー氏は、グリーンスパン氏の表現を借りて、「根拠なき熱狂は、投機的なバブルの心理的基盤だ」との考えを示した。

 シラー氏の考えによると、バブルとは、「資産価格上昇のニュースが、心理的伝染によって投資家の熱意を刺激し、価格上昇を正当化するストーリーを増幅し、ますます多くの投資家を呼び込む状況」と定義される。つまり、投資家は、資産価値の上昇を目の当たりにし、投資の真の価値に疑念を抱いているにもかかわらず、他人の成功への羨望と、ギャンブラー的興奮によって、投資に引かれてしまうのだ。定性的な定義ではあるが、投資家心理の観点からはこうした観測は的を射ているように思える。羨望と興奮が熱狂となり、資産価格を高騰させるのだ。

 こうした定義が正しいとした場合、我々が直面している株式市場の状況は「バブル」であると言えるのだろうか? 前置きが長くなったが、そうした答えの手掛かりを得るために、資産バブルの事例を振り返っていきたい。

続きを読む 2/3 バブルがなぜ「泡」で例えられるのか

この記事はシリーズ「大崎匠の温故知新「バブル史」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。