バブル事件には複数の類似点が

 今回紹介したチューリップマニアは、過去に紹介したウサギバブルと類似点が多い。

 (1)その所有がステータスとなっていて、(2)価格上昇が投機家を呼び込みバブルが形成され、(3)新たに施行されたルールと、(4)供給増によってバブルが崩壊した。

 国と時代が違えど、人間は歴史を繰り返すのだ。

 現代に目を向けてみると、幾つもの類似点を見い出せる投資対象がある。まず、乱立する暗号通貨(仮想通貨)。暗号通貨は、通貨によって仕組みは異なるものの、無数の「資産」を生み出せる。実社会での利用価値が(いまだ)乏しい暗号通貨は投機家を呼び込み、高騰したり暴落したりと「プチバブル」を繰り返している。

 チューリップのように、金融資産以外のバブルは決して珍しいものではない。ロレックスやパテックフィリップなどの高級腕時計だけでなく、ポケモンカードに代表されるトレーディングカード、ひいてはメダカの価格も高騰している。パンデミック初期には、マスクや消毒液が買い占められ、高値で取引されるなどのバブル状態にあった。チューリップのように「観賞する」という本来の目的を離れ、投機家の「金もうけ」の道具と成り下がってしまうことが、全てのバブル形成の出発点になる。

 バブル形成の本質は需給のゆがみだ。需要に色は付けられない。しかし、リアルな需要、つまり投機目的以外の需要だけならば、バブルを生み出すほどの熱狂は発現しないだろう。だが、ひとたび投機家に目を付けられ、熱狂の渦にとらわれたとき、バブルは形成される。

 先のゴードン・ゲッコーは言った。「Greed is Good(強欲は良いものだ)」と。本当に良いものであれば、投機家の強欲はバブルを崩壊させることはないだろう。彼のその言葉は、ヒールとしての矜持(きょうじ)すら感じさせる。

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この記事はシリーズ「大崎匠の温故知新「バブル史」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。