なぜ「球根」が投機の対象となったのか?

 チューリップマニアで高騰したのは「球根」だ。バブル真っただ中であっても、チューリップの種はそれほどの値上がりは見せなかったという。なぜか? 実は、チューリップは種をまいてから花を咲かせるまで5年から長い場合は10年もの時間を要する。そのため、球根の価格高騰を見てから種をまき始めても遅すぎるのだ。生産調整の難しさは供給制約となり、需要が高まる中では価格高騰を正当化する理由になると、投機家のコミュニティーでは考えられたのだろう。ただ、この点は後に誤りであることが分かるのだが。

 そして、球根は再生産されるという特徴を持つ。球根は、花を咲かせた後に「分球」と呼ばれる小さな球根を生み出す。その分球を育てることで新たな球根となり、また分球を生産するのだ。ひとたび希少種の球根を手に入れてしまえば、適切な処理と手入れによって、分球を増やし続けることができる。資産を文字通り「増やす」ことができるのであれば、これ以上の投資対象はない。まさに黄金の卵を産むニワトリであった。そういった意味では、球根が投資(投機)の対象となるのは必然であったように思える。

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