育成シミュレーションゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の人気が沸騰した影響もあり、「一口馬主」のブームが再燃しているという。はたまた、在宅勤務によるペット需要も高まる一方だ。そんな中、意外な動物の権利を得られるサービスが生まれつつある。その動物はなんと「象」だ。

 日本に象が伝来し、はや600年。一時は徳川吉宗公が所有し、浜御殿に飼われていた時期もあり、時の権力者でなければ飼えなかった動物だ。そんな象の疑似的な主人となれる権利「象主」制度を立ち上げたのが、豊橋総合動植物公園「のんほいパーク」だ。同園にはアジアゾウが6頭おり、6人の象主を11月から募集した。

 1年間象主になれる権利はなんと30万円。ただ、それなりの特典がある。園の年間パスの贈呈や2ショット写真撮影、バックヤードツアーへの招待だけでなく、オリジナルの「象主看板」が園内に設置されて特別な象主名刺も渡される。さらに、象の誕生日にはお祝いのフルーツバスケットをプレゼントでき、象からはグリーティングカードが届くなど、てんこ盛りだ。象好きにとって夢のような企画だが、募集は6頭分=6人だけと狭き門でもある。「30万円で象主に」という変わった企画はどのようにして生まれたのか。元公園長で現・事業推進アドバイザーの瀧川直史さんに話を聞いた。

1カ月の食費は24万円から

今回、象主になれる権利を1人30万円で11月25日まで募集されています。こちら、実際に応募者はいらっしゃったんでしょうか。

瀧川直史氏(以下、瀧川氏):おかげさまで多くの方に問い合わせをいただいております。抽選制のため具体的な応募者数までは公開できませんが、当園にはアジアゾウが6頭おり、1頭につき1人募集してます。

 1年間限定でこの象たちの象主となれるだけでなく、象主認定状をお渡しし、象の飼育体験、バックヤードツアー、象との2ショット撮影などを行えます。お客様と動物のつながりを持てるような盛りだくさんの企画を予定しています。

 エサやりなどは、他園でもよくある体験として提供されていますが、バックヤードに入り象舎で飼育員と一緒にお掃除や象の生活環境を体験したり、これまで飼育委員しか経験したことのない足裏のお手入れをしていただけたりもします。そうしたお金では買えない体験に興味を持ってもらえているんだと考えています。今回の収益の一部は象の飼料代(エサ)にあてたいと考えています。

JR東海が推進する“推し旅”。推しに接するリアルな体験を提供するツアーを提供。他にも独自のミュージシャンを絡めたツアーや酒蔵体験なども実施を予定している。(画像加工は筆者によるもの)
JR東海が推進する“推し旅”。推しに接するリアルな体験を提供するツアーを提供。他にも独自のミュージシャンを絡めたツアーや酒蔵体験なども実施を予定している。(画像加工は筆者によるもの)

象はどのぐらいの飼料を食べるのですか。

瀧川氏:大人のオスの象で1日あたり40kgの干し草を食べます。飼料代は1月あたり24万円かかり、他の動物と比較しても非常に高いです。健康を維持するためには、シッカリとした質の高い飼料を食べてもらいたい半面、これだけの量を毎日食べるのでコストが非常にかかります。

 当園でも、河川敷に生えている竹などを切って与えるなど節約はしておりますが、今回の象主にその一部を支援いただけるということで、非常に助かっています。

象主という企画はどうやって決まりましたか。

瀧川氏:JR東海より、動物園を絡めた体験プランをやりましょうとお声がけいただいたことがきっかけで始まりました。先に30万円という金額が決まり、それに見合うサービスを提供することで「象主」に決まりました。

 ナイトZOOやバックヤードツアーといったものは、過去にもありましたが、体験する人が、より密接に動物とふれあえること。そして、当園自慢の「象の生息域に似せた環境」を体験してもらえるプランということで、プレッシャーを感じながら企画を作り上げました。

 その中で、のんほいパークの目玉動物でもある象にフォーカスした形になります。というのも、のんほいパークは他園と比較すると、飼育環境が整っています。運動場のような広さ、池や坂も用意され、砂地など一目で他の園との違いを感じ取ってもらえるのではないでしょうか。

 また、象の数も6頭と多いのが特徴で、象同士の距離感やコミュニケーションなど、象がどうやって暮らしているのかを垣間見ることができるはずです。

続きを読む 2/2 象は何より足が大事!

この記事はシリーズ「佐藤大介のこれから来る「ビジネスの兆し」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。