今まで無かった読書の地図を作った『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』

『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP、488ページ、3080円)
『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP、488ページ、3080円)

 在宅勤務により読書時間が多くなった半面、書店へ行く機会は減少傾向だ。オンラインの書店では体験できないふとした本とのセレンディピティ(偶然の幸福な出合い)や名書店員による推薦。人生を変える一冊との出合いは、本来は書店に足を運ぶタイミングで生まれるものだ。そうした見えないニーズに即してヒットしているのが本書『読書大全』だ。

 著者は書評家としても著名な堀内勉氏。書店の売れ筋ランキングには入らないが、教養として学ぶべき内容が書かれた本や古きベストセラーなどを多くピックアップしている。そのジャンルは資本主義に始まり、宗教、歴史、人類など非常に広い。

 当初は100冊をピックアップし紹介する予定だったが、候補書籍が多くなった結果この厚さになったそう。最終的に200冊を紹介しているが、多すぎず少なすぎない絶妙な選書群だ。筆者により本書の読み方は定義されていないが、パラパラッとめくり自分に合う本を探すといった読み方が最適だろう。

 多くのビジネス書が1冊読んで行動することが基本形だが、本書はこれを読むだけでは完結しない。自分が読みたい、気になる本を見つけるために最適な本なのだ。新たな読書体験のリンクを作る本書は、コンテンツ過剰な現代において本当に求められている1冊なのかもしれない。

 書籍ランキングを追うだけが読書の仕方ではない。良書として長く読まれる本は、時代を超えて人の悩みや仕事の壁を越える何かを持っている。温故知新という言葉を想起させる1冊だ。

ビジネス書の明日はいかに

 今回ご紹介した分厚くて網羅性や読了感のあるビジネス書群。よくいわれる出版不況をはねのけるブルーオーシャンを開拓していると理解していただけただろう。しかしながら、読者ニーズに反して、この「鈍器本マーケット」が更に開拓されるということもない。その理由はこういった書籍は十冊本を作るのと同等の労力がかかるということだろう。

 本を書くために必要なリサーチ時間が通常の数倍から十倍かかると、どの作者も口をそろえて言っている。また、ページ数が非常に多いためそもそも執筆にコストも多分に発生してしまう。今回紹介した『独学大全』は、脱稿に2年、整理1年、計3年の期間がかかっている。『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』は、執筆編集は1年半といっているが雑誌の積み上げもふくめれば40年の歴史がある。ヒットすればいいが、空ぶった場合のダメージは比較にならない。

 また単に本を書き上げれば完成ではなく、ゼロからの視点に立って読み返すと整合性が崩れることもある。そういったかかる時間と手間、そして熱量が、読者に間接的に伝わっている形が鈍器本なのかもしれない。

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